集団かぜからのB型インフルエンザウイルスの分離−福井県
(Vol.25 p 8-9)

福井県では、2003年11月26日、今季初発の集団かぜが小学校で発生した。発生報告によると、全校生徒157名のうち、学年閉鎖した1年生(1クラス:在籍者数24名)では、患者数は20名、欠席者数は13名であった。福井県における集団かぜの初発は、1月中旬以降であることが多く、今シーズンは例年より2カ月近く早い発生となった。

患者9名のうがい液を採取し、MDCK細胞に接種したところ、初代培養で接種4日目には5名の検体で明瞭な細胞変性効果(CPE)が観察された。分離したウイルスについて0.5%ニワトリ血球を用いてHA試験およびHI試験を行った。HI試験には国立感染症研究所から分与された2003/04シーズン用インフルエンザウイルス抗血清を使用した。

その結果、5名から分離されたウイルスの各抗血清に対するHI価は、抗A/Moscow/13/98(ホモ価 1,280)、抗A/New Caledonia/20/99(ホモ価 320)、抗A/Panama/2007/99(ホモ価 1,280)、および抗B/Shandong(山東)/7/97(ホモ価 160)各フェレット感染血清に対しては<10、抗B/Johannesburg/5/99羊高度免疫血清(ホモ価 2,560)に対しては1,280であった。このことから、これらのウイルスは山形系統のB型インフルエンザウイルスと同定された。

昨シーズンは全国的にB型の流行はVictoria系統株が主流であり(本月報Vol.24、283-288参照)、福井県内においても山形系統株はシーズンの終わりころに少数分離されたのみであった。今回調査した患者9名のうち3名(いずれもウイルス分離陽性)はワクチン1回接種者であったが、山形系統の株は今季のワクチンには含まれておらず、家族内感染もあったことから、流行の拡大が懸念された。

12月8日現在、これに続く集団発生の報告はないが、今後の動向に注目したい。

福井県衛生環境研究センター 中村雅子 東方美保 川畑光政 堀川武夫
福井県嶺南振興局若狭健康福祉センター 嶋田泰大 野瀬浩子 門前孝昭 柳本政浩

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る