愛媛県において初めて発生した日本紅斑熱事例

(Vol.25 p 11-12)

2003年8月、愛媛県において日本紅斑熱患者が相次いで2例発生した。日本紅斑熱は1984年に報告されて以来、国内では九州、四国、中国、関東地方などで主に発生が見られており、特に近隣の高知、徳島両県では患者が多く発生していたが、当県での発生報告はなかった。今回の2例はともに、臨床症状が日本紅斑熱に特徴的であって、診断を当所に依頼された症例であった。これらの患者住所地は距離的にも離れており、聞き取り調査から、感染場所は両事例とも自宅近辺と推測され、相互に関係のない愛媛県内感染例と考えられたので報告する。

[事例1]北条市在住、60歳女性。

経緯および臨床症状:2003年8月3日発熱、8月6日近医を受診しメロペネム、クリンダマイシンの投与で解熱せず、8月11日松山市内のN病院へ紹介入院となった。症状は高熱(39.7℃)、発疹(紅斑)、刺し口(背部)の確認で典型的な紅斑熱症状がみられ、ミノサイクリンの投与で解熱改善し、ワイルフェリックス(OX2)80倍であったので、血清学的診断が当所に依頼された。

リケッチア抗体検査:Rickettsia japonica YH株を抗原とした間接蛍光抗体法をペア血清で実施した。8月11日(9病日)の血清ではIgM抗体40倍、IgG抗体320倍で、8月25日(23病日)の血清ではIgG抗体2,560倍を示し、日本紅斑熱の感染が確認された。Orientia tsutsugamushi (Gilliam 、Karp、Kato、Kawasaki、Kuroki株)に対する抗体は認められなかった。

[事例2]宇和島市在住、53歳女性。

経緯および臨床症状:8月20日頃発熱、市内U病院を受診したが症状が軽快せず、8月29日市内のS診療所を受診した。刺し口の確認はできなかったが、発熱(38℃)、発疹(紅斑)等から紅斑熱を疑いミノサイクリンの投与で解熱改善し、ワイルフェリックス(OX2)320倍であったため、血清学的診断が当所に依頼された。

リケッチア抗体検査:最初にシングル血清[8月29日(10病日)]で事例1と同様の方法で実施した。R. japonica に対してIgM抗体40倍、IgG抗体640倍を示し、日本紅斑熱の感染が確認された。回復退院後、10月14日(55病日)採血の血清ではIgG抗体が1,280倍であった。また、O. tsutsugamushi (前記の5抗原)に対する抗体は認められなかった。

これら両事例の日本紅斑熱患者発生地を地図上に示した。北条市は県の中部地区、宇和島市は南部地区に位置し、両市とも海に面しているという共通点はあるものの、距離的には互いに離れている。また、聞き取り調査から感染場所は、事例1は自宅近くのみかん畑で、事例2は自宅の庭であったと推測されたことより、両事例は相互に関係なく県内で感染したものと考えられた。

日本紅斑熱は、早期診断・早期治療がなされれば、予後は良好とされている疾患であるが、今回の2事例は発症から診断までに10日近くを要しており、今まで発生のなかった本県では、県内でも発生する可能性があるということを、広く医療機関へ情報提供する必要を強く感じた。相次いで発生した2事例の居住地は、地理的にも遠く、相互に関係はなく感染したと思われたことから、県内には感染源であるリケッチア媒介マダニの棲息地が複数存在すると考えられる。今後、マダニの生態・分布調査およびリケッチアの検出等を実施し、県内における日本紅斑熱リケッチアの侵淫状況の把握に取り組んでいかねばならないと考えている。

愛媛県立衛生環境研究所
近藤玲子 大瀬戸光明 山下育孝 豊嶋千俊 田中 博 井上博雄
高知県衛生研究所  千屋誠造 永安聖二
松山赤十字病院   田中良憲
正光会広小路診療所 近藤俊文

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