腸管出血性大腸菌O26集団発生事例−兵庫県

(Vol.24 p 326-326)

兵庫県津名健康福祉事務所管内の医療機関から2003年7月31日、同健康福祉事務所に腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症患者(O26、VT産生性)の発生届けがあった。患者(2歳、男児)はA保育園の園児で、7月23日より下痢、腹痛の症状があり、7月24日に医療機関を受診し、7月31日にEHEC O26が分離された。同健康福祉事務所が行った家族の検便の結果、患者の兄(7歳、男児)からEHEC O26が検出された(8月4日)。また、別の医療機関からEHEC O26感染症患者(1歳、男児)発生の届けがあり、この患者はA保育園の園児であったため、同健康福祉事務所は保育園内での集団発生の可能性を考え、園児等に対して検便等の調査を行った。

A保育園4クラスの園児 177名(男児98名、女児79名)、職員18名、および家族、接触者についての健康福祉事務所による検便の結果、0歳〜2歳児、および5歳児組の2クラスの園児12名(男児11名、女児1名)および、その家族4名からEHEC O26が分離された。一方、保育園が冷凍保管していた給食等12件から菌は分離されなかった。

菌分離時の症状は2名が血便、1名が下痢、および発熱を呈した。他の園児は無症状であったが、聞き取り調査の結果、菌が分離される以前に、菌陽性者7名を含む2クラスの園児15名に、下痢または腹痛の症状があった。これら園児は7月16日〜8月10日の期間に発症し、発症日は園児によって異なっていた。また、初発の園児はホスホマイシンを投与されていたが、いったん菌の陰性化が確認された後、排菌が2度(8月20日、9月16日)観察され、最終的に陰性化が確認されたのはノルフロキサシン投与後の10月15日であった。

患者・感染者16名から分離された18株(EHEC O26:H11)は、いずれもVT1単独産生のアンピシリン耐性株であり、eae 遺伝子およびEHEC-hly 遺伝子を保有していた。分離株について、制限酵素Xba Iを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンの解析を行った結果、分離株のXba I切断パターンには類似した2パターン(のPFGE型 a,b)が存在し、これらのパターンの相違は、感染園児のクラスや兄弟関係の相違とは関連性がなかった()。そこで、患者等の便から単離したコロニ−について、それぞれのPFGEパターンを調べた。初発園児の最初の便材料は調べられなかったが、再分離された8月20日の便を含めた7名の便には数に差はあるが、いずれもa、bまたはb'の3つのパターンを示す菌が含まれていたことが明らかになった。ただし、b'のパタ−ンについては、再分離の1株のみであり、低分子量のバンドに変異がみられることから、プラスミドの脱落等による変異の可能性も示唆された。

本事例は流行期間中の感染者の発症日に特異的なピークが認められないことから、患者あるいは感染者により保育園にもたらされたEHEC O26のa、b、2種類の菌が二次感染によって園児間に広まったものと推察された。

兵庫県立健康環境科学研究センター
辻 英高 池野まり子 押部智宏 西海弘城 大嶌香保理 山本昭夫 山岡政興
兵庫県津名健康福祉事務所 濱田大輔 東 美鈴 馬淵 理
兵庫県洲本健康福祉事務所 大町隆生 馬場博章 藤本享男

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