ラーメン店が原因施設とされた志賀毒素産生性大腸菌O157:H7食中毒事例−福井県

(Vol.24 p 265-266)

ラーメン店が原因施設とされ、 京都府内でも患者発生がみられた志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157食中毒事例の概要を報告する。2003(平成15)年7月13日と14日にSTEC O157感染症(stx 1+2)として医療機関から届け出があった患者について、 若狭健康福祉センターが調査した結果、 7月5日に小浜市内のXラーメン店(X店)で喫食していたことが判明した。さらに、 7月17日京都市に届け出があった患者(stx 1+2)も、 7月5日X店で喫食していたとの連絡が同市からあった。また、 同日京都府に確認したところ、 7月16日と17日に府に届け出があった患者3名のうち、 1名は7月5日にX店で、 2名はそれぞれ7月4日と5日に京都府福知山市の同系列のY店で喫食していたことが判明した。原因食品として、 県内の患者および保菌者の共通食品であるキムチ(本店が一括調達した)が考えられたが、 7月17日に店内にあったキムチは7月5日分とは異なるロットであり、 キムチを含む食材5検体およびふきとり5検体の検査をしたものの、 O157は検出されなかった。

その後、 健康福祉センターの指示による濃厚接触者の検便により、 初発患者の同行者およびX店の従事者の1人からO157(stx 1+2)が検出された。そこで、 健康福祉センターは、X店の食事が感染原因として同店を21日から2日間営業停止処分にした。7月22日には福井県内の患者2名と保菌者2名(従事者1名を含む)のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンが同一であることが判明した。

また、 二次感染を防ぐため県は21日〜27日まで、 県内各健康福祉センターに相談窓口を設置し、 7月5日にX店を利用した477人を中心に健康相談を受付けたところ、 7月5日の喫食者19名および7月7日〜19日までの喫食者6名の糞便検査依頼があり、 そのうち7月23日に受付けをした7月5日喫食者1名(A)からO157(stx 1+2)を検出した。福井県内では合計5名から検出されたことになる。京都府へはさらに2名の届け出があり、 合計すると京都府への届け出者は5名、 京都市への届け出者は1名であった。患者および保菌者の利用日および利用店別にみると、 7月5日のX店が7名、 7月4日のY店が2名、 7月5日のY店が1名およびX店従事者が1名であった。福井県と京都府の10名から検出された株のPFGEパターンは、 A由来株(one band differ)を除いてすべて同一であることが判明し、 共通の感染源からの曝露を受けていたことが示唆された(京都市の株は未確認)。なお、 プラスミド・プロファイルは10株すべて一致した。

今回の食中毒事例では、 原因食品の供された日が特定されたため、 二次感染を防ぐ目的で当日の喫食者を中心に糞便検査を受付けたところ、 喫食後18日目の検体から菌(PFGEパターンはone band differ)が分離されたことが注目された。

福井県衛生環境研究センター 石畝 史 前田央子 京田芳人 堀川武夫
福井県若狭健康福祉センター
増田登美子 新谷明子 望月典郎 門前孝昭 柳本政浩
京都府保健環境研究所
浅井紀夫 藤原恵子 江崎久夫 森垣忠啓

腸管出血性大腸菌の表記に関するIASR編集委員会註:1996年に国際的な専門家による委員会の意見として、 志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing E. coli , STEC)の名称を推奨するとされたが、 その発見および研究の経緯からVero毒素産生性大腸菌(Verocytotoxin-producing E. coli , VTEC)、 あるいは腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic E. coli , EHEC)の名称が現在でも使用されている。IASRでは正式な統一名称が決定するまで、 署名原稿においては著者の記載を尊重し、 そのまま掲載している。

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