保育所におけるエコーウイルス9型による発疹症の集団発生事例−岩手県
(Vol.24 p 224-224)

2003年5月〜6月にかけて、 盛岡保健所管内の保育所において、 エコーウイルス9型(E9)による発疹症の集団発生を確認したので、 その概要を報告する。

患者発生状況:6月1日A保育所の担当医から、 発疹を呈する子が多数いるとの情報が寄せられた。積極的疫学調査として、 患者の発生状況を調査するとともに、 咽頭ぬぐい液についてウイルス検査を実施した。患者は発疹(丘疹、 紅斑)を主症状とし、 一部の患者は発熱(37〜39℃)および気管支炎を呈していた。発疹以外には症状がない患者もいたため、 「発疹を有する者」を調査対象とした。発生は5月19日に始まり、 6月10日まで続いた(図1)。初発患者は1歳児クラスで、 2歳から4歳児クラスに広がり、 兄弟間の感染も認められた。在籍者95名中14名(15%)に発疹が認められた。年齢クラス別の患者数は2歳児、 3歳児、 4歳児と年齢が進むに従って減る傾向にあった。また、 0歳児および5歳児クラスに患者は認められなかった(表1)。

ウイルス分離:患者5名の咽頭ぬぐい液を検体とし、 CaCo-2、 Vero、 RD-18S、 HEp-2の4種類の細胞に接種したところ、 4検体でCaCo-2細胞にのみCPEが認められた。中和試験は国立感染症研究所から分与されたエコーウイルスプール抗血清(EP95)およびデンカ生研製エンテロウイルス混合抗血清および単味抗血清を用いて行い、 E9と同定された。

考 察:岩手県における感染症発生動向調査事業による病原体検査によると、 1997年に上気道炎および感染性胃腸炎の検体からE9が多く検出され、 流行が確認されたものの、 1998年以降、 E9はほとんど検出されていない。今後の動向に注目したい。

岩手県環境保健研究センター
高橋朱実 佐藤直人 藤井伸一郎 佐藤 卓 齋藤幸一 田澤光正
山口クリニック    山口淑子

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る