手足口病に脳脊髄炎を合併した10カ月女児からのエンテロウイルス71型の検出−島根県
(Vol.24 p 219-220)

島根県では2003年第21週から手足口病患者が増加し、 現在流行中であるが、 脳脊髄炎による右上肢麻痺を合併した1例からエンテロウイルス71型(EV71)を検出したので、 県内の無菌性髄膜炎、 手足口病の流行状況と併せて報告する。

症例は10カ月女児。6月9日に発病し、 39℃の発熱と手足口病、 右上肢麻痺を伴う脳脊髄炎を起こした。ウイルス感染を疑い、 髄液と咽頭ぬぐい液(6月13日採取)および糞便(6月16日採取)の検査依頼があった。培養細胞(AG-1、 RD、 Vero、 FL)によるウイルス分離が陰性であったため、 5'NCR-VP2領域のRT-PCRによるエンテロウイルス遺伝子検出を行ったところ、 糞便から遺伝子が検出され、 ダイレクトシークエンス後NCBI Blastを利用した相同性検索の結果、 EV71と同定された。患者の症状は軽快したものの、 現在も麻痺が残存しており、 治療中である。

4月以降、 本症例以外に手足口病、 ヘルパンギーナあるいは発疹を伴った無菌性髄膜炎例が5例認められており、 手足口病に無菌性髄膜炎を併発した2例からEV71を検出した。内訳は、 1カ月男児で糞便からVero細胞でEV71を分離、 咽頭ぬぐい液からEV71を検出(RT-PCR)した例と、 5歳男児で咽頭ぬぐい液からEV71を検出(RT-PCR)した例である。髄液は検査を行ったが、 いずれも陰性であった。また、 無菌性髄膜炎例は17例あり、 1例の咽頭ぬぐい液からEV71が分離されている。

一方、 手足口病は2月〜7月に75例86検体について培養細胞(AG-1、 RD、 Vero、 FL)と哺乳マウスでウイルス分離を行なった。分離状況はのようにEV71を中心とした流行である。患者数は第28週をピークに減少傾向であるが、 県東部・中部では依然患者の多い状況が続いている。

なお、 EV71はVero細胞のみで分離され、 1983年分離株抗血清を用いて中和同定を行った。同定はウイルスを代替フロン処理することによって難中和性が回避された。

島根県保健環境科学研究所
飯塚節子 田原研司 糸川浩司 川向明美 板垣朝夫

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