同一小学校における腸管出血性大腸菌O26による集団感染事例−秋田県

(Vol.24 p 184-184)

2003(平成15)年6月6日、 秋田県雄勝郡内の医療機関を受診したA小学校の男子児童1名から腸管出血性大腸菌(EHEC)O26 VT1を検出し、 その後、 湯沢保健所の調査によりさらに同小学校児童7名とその家族1名から同じ病原体が検出された集団感染事例について報告する。

初発の男子児童は、 6月3日より腹痛と下痢(便にやや赤い物が混在)を訴えて医療機関を受診し、 検便の結果6日にEHEC O26 VT1が検出された。なお、 その児童は3、 4日と学校を休んだが、 5日からは多少の腹痛があったものの登校していた。届け出を受けた保健所が、 患者家族5名の健康確認調査を行った結果、 家族1名からO26 VT1が検出された。さらに、 6日夕方、 新たに同小学校の女子児童1名が腹痛、 下痢を訴え医療機関を受診し、 7日O26 VT1が検出されたが、 調査の結果、 家族内に病原体保有者は認められなかった。学校と協議を行った結果、 保護者の同意を得て児童93名と教職員13名を対象に検便を実施することとした。その結果、 6名の児童からO26 VT1が検出され、 うち1名のみ有症状者であり、 その他の5名は無症状病原体保有者であった。さらに、 他の児童1名からはEHEC OX3 VT2が検出された。なお、 病原体保有者は、 すべて5、 6年生に限られていた。

初発の男子児童および2例目に発症した女子児童が同学年であったこと、 自宅が隣接する町内に位置することから、 保健所では当初、 学校内感染、 および地域内感染を疑い調査を行った。しかしながら、 その後病原体保有者であることが確認された児童6名を含めた計8名の児童の自宅がそれぞれ異なる町内にあること、 当該地域において症状を訴えて医療機関を受診した者が他に認められなかったことより、 地域内感染の可能性は低いものと考えられた。また、 これら児童8名のうち5名の家庭は井戸水を使用しており、 残りの水道水を使用している家庭においても一部で残留塩素濃度が規定値以下であったため、 確認のため飲料水の病原菌検査を行ったが、 EHEC陰性であった。なお、 近所に牛舎等も認められなかった。

一方、 児童8名の摂食状況等を調査した結果、 共通性は認められなかった。さらに、 給食はセンター方式であったが、 当該給食センターより配給されている他の学校においては患者発生がなかった。また、 飲料水(給食センター、 学校等)、 検食(保存食)、 給食センター職員の便について病原菌検査を実施したが、 EHECはすべて陰性であった。環境調査を行った結果、 病原体保有者が認められた5、 6年生が使用するトイレ等は4年生も使用していることから、 5、 6年生に特異的な共通事項は認められなかった。

衛生科学研究所においては、 医療機関の分離株2株についてEHEC O26 VT1であることを確認した。また、 便161検体(学校関係者107検体、 給食従事者14検体、 患者家族39検体、 その他1検体)、 給食検食25検体、 飲料水8検体、 家庭内ふきとり3検体を対象に検査を行い、 便7検体からO26 VT1、 1検体からOX3 VT2を検出した。O26 VT1+の9株について制限酵素Xba Iを使用しパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンを比較した結果、 9株すべてのPFGEパターンが一致した。

今回の集団発生事例では、 児童数名とその家族から共通の病原体が検出されたが、 患者に共通する摂食、 環境要因等がないことから、 原因物質を特定するには至らなかった。

秋田県衛生科学研究所
笹嶋 肇 八幡裕一郎 齊藤志保子 八柳 潤 鈴木紀行
秋田県湯沢保健所 佐々木 梢 永井伸彦

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