インフルエンザ流行期におけるアデノウイルスの分離状況−三重県

(Vol.24 p 160-161)

2003年2月〜3月のインフルエンザ流行期に小児科を受診した患児のうち、 臨床診断でインフルエンザを除いた発熱患者61例についてウイルス検索を行った。発熱を主訴とした患児57例(58検体)がキャピリアAB陰性・チェックアデノ陽性となったアデノウイルス感染症であり、 2例がヘルペスウイルス感染症疑いであった。その他、 突発性発疹および手足口病が各1例であった。これらの患児合計61例中26例(62検体中27検体)からアデノウイルスが分離された。患児の年齢は5カ月〜9歳(平均3.0歳)で、 性別は男12例(13検体)、 女14例であった。検出された患児のうち2例は姉弟であった。また、 同じ患児で1回目の採取と2週後に採取した2回目の検体から異なる血清型が検出された事例もあったが、 他は散発事例であった。

分離に用いた検体は咽頭ぬぐい液52検体、 鼻汁8検体、 糞便1検体で、 初代分離はVero、 HEp-2、 HeLa、 MDCK、 RD、 RD-18S、 CaCo-2で行った。

分離されたアデノウイルスは3型がもっとも多く20検体(77%)で、 他には1型、 2型、 5型がそれぞれ2検体(各 7.7%)であった。月別の分離状況をに示す。

アデノウイルスが分離された患児の臨床症状は発熱(38.1〜39.9℃)が最も多く25例、 以下上気道炎8例、 胃腸炎6例、 発疹2例であり、 結膜炎はいずれの患児にも認められなかった。

本県ではインフルエンザ流行期前の10、 11月にはアデノウイルス2型が主流であったが、 インフルエンザ流行期にはアデノウイルス3型が主流となった。38℃以上の発熱期間が3日以上継続していたことから、 医療機関においてインフルエンザとアデノウイルスのスクリーニングを実施しているが、 今回はインフルエンザ流行期にアデノウイルス3型の流行が重なったことから、 臨床症状だけによるインフルエンザの診断には注意する必要があることが考えられた。

なお、 4月に搬入されたアデノウイルス感染症患児からも3型5例、 1型・5型が各1例分離されており、 継続して流行していることが考えられる。

三重県科学技術振興センター保健環境研究部
西 香南子 矢野拓弥 杉山 明 中山 治
落合小児科医院 落合 仁

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