保育所でのプールが感染経路であると疑われた腸管出血性大腸菌O157集団感染事例−徳島県

(Vol.24 p 133-134)

2002年8月、 県南部の保育所において簡易プールが感染経路であると疑われる腸管出血性大腸菌O157:H7(以下O157)による集団感染事例があったのでその概要を報告する。

8月23日、 M保育所の園児A、 Bの2名からVT2産生O157を検出した旨の届け出が医療機関から保健所にあった。園児Aについては、 8月14日から下痢、 血便が認められ、 8月17日に溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症していた。園児Bについては、 8月16日から下痢、 血便が認められたが、 8月23日の届け出時には症状はほぼ消失していた(表1)。

保健所は、 M保育所の聞き取り調査を行うとともに、 患者家族、 園児、 保育所の職員等186検体の検便検査を実施した。また、 検食5日分46検体および施設のふきとり検査等75検体についても、 逐次検査を行った。

その結果、 園児5名(乳児〜1歳児組3名、 2歳児組2名)と園児Bの祖母1名の計6名からO157が検出され、 検食およびふきとり検体等からは検出されなかった。

分離された菌株8株はすべてO157:H7で、 VT2産生であった。また、 薬剤感受性試験では、 10薬剤(CEZ、 TC、 DOTXY、 CP、 GM、 NA、 OFLX、 CL、 FOM、 LVFX)に対してすべての菌株とも感受性を示した。

なお、 パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)は同一の泳動パターンを示し、 8名とも同一の菌株による集団感染であることが強く示唆された。

保健所が園児の保育状況などを調査したところ(表2)、 保育所は2階建てであり、 感染者が2階のクラスのみに偏っていること、 プールについては各階で別の簡易プールを利用していることが明らかとなり、 感染経路としてプールに疑いをもった。そこで、 園児のプール利用状況、 プールの衛生管理(プールの大きさ、 消毒剤の使用量・残量、 購入伝票を含む)等を詳細に調査した。その結果、 残量から計算した消毒剤使用量は、 簡易プールで塩素が有効となる適正使用量を大幅に下回ることを確認した。また、 症状が明確な症例から算出した平均潜伏期間は7.3±1.5日であること、 菌陽性者のプール利用状況から、 8月8日および8月22日のプールでの感染の可能性が高いと考えた。

なお、 患者Hについては、 入浴を園児Bと毎日ともにしており、 風呂を介した感染が強く疑われた。

本事例では、 届け出医療機関が細菌検査を外部委託しており、 当初は腸管出血性大腸菌感染症を疑っておらず、 他の細菌検査は実施していた。O157については園児AがHUS を発症した時点で追加検査されたため、 発症から届け出までに約10日間を要したこともあり、 保健所が探知した時には他の感染者(菌陽性者)の大部分は既に症状が消失していた。このような特殊な事情のため調査に時間を要した。

今回の経験から、 今後の発生予防として簡易プールの衛生管理の重要性が示唆された。

徳島県日和佐保健所 倉橋佳英
徳島県保健環境センター 清水俊夫 立石ひとみ

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