インフルエンザ流行期におけるエンテロウイルス71型による手足口病の流行−山形県

(Vol.24 p 112-112)

山形県では、 2000年に手足口病が大流行し(本月報Vol.21、 No.12、 274)、 その後の患者発生は小康状態が続いている。2002年の手足口病患者検体では、 24件から16株のA群コクサッキーウイルス(CA)16型、 1株のB群コクサッキ−ウイルス2型を分離・同定した。

2002/03シーズン、 12月中旬からインフルエンザA香港型とB型の混合流行が始まった。今回、 我々は、 インフルエンザの流行期にエンテロウイルス71型(EV71)による手足口病の地域流行がおこっていることを観察したので報告する。

定点からの手足口病患者数報告は、 例年3月末までに40名程度であるが、 本年は第14週までに196名に達した。検体数は、 1月〜4月11日現在までに30(咽頭ぬぐい液27、 便・水疱内容物・髄液各1)となった。年齢は5歳未満20例、 5〜9歳8例、 10〜14歳2例であり、 臨床診断は手足口病のほか、 無菌性髄膜炎1例、 脳炎疑い例2例が含まれていた。HEF、 HEp-2、 Vero、 MDCK、 RD-18S、 GMK細胞でウイルス分離を実施した結果、 GMK細胞(一部HEF・RD-18S細胞)でエンテロウイルス様の細胞変性効果を観察した。国立仙台病院ウイルスセンターから分与されたEV71とCA16抗血清で中和試験を行い、 16株がEV71と同定された(6例は検査中)。うち手足口病と診断された1例では同じ検体からMDCK細胞でインフルエンザB型も分離された。一方、 臨床的にインフルエンザが疑われた患者3名からもEV71(1名ではインフルエンザ検出キットでB型も陽性)が分離されている。

エンテロウイルスは毎年夏季を中心に、 無菌性髄膜炎、 手足口病、 ヘルパンギーナ、 などの流行を起こすが、 秋以降にもこれらの流行が遷延する場合がある(本月報Vol.21、 No.10、 212-213)。実際、 手足口病について、 EV71の10〜12月の流行(本月報Vol.21、 No.4、 76)、 2002年2〜4月のCA16による流行(本月報Vol.23、 No.6、 144)などの報告がある。特に今回、 インフルエンザB型との混合感染例が2例認められ(検体はいずれも咽頭ぬぐい液)、 1例は手足口病として、 1例はインフルエンザとして臨床診断がなされている事実は、 ウイルス性疾患の病原体診断の難しさを象徴しているといえる。手足口病が夏季以外に流行したり、 インフルエンザの流行が春〜初夏に及ぶ(本月報Vol.23、 No.12、 307-308)など、 ウイルス性感染症の発生動向調査にあたっては、 従来から常識化している季節性にとらわれずに実施する必要があるといえるのではなかろうか。EV71による手足口病に関連していえば、 今後夏季にむけて大流行につながっていかないかどうか、 また、 重症化の有無についても十分に注意して経過観察していく必要がある。

山形県衛生研究所 水田克巳 安孫子千恵子 村田敏夫 村山尚子 早坂晃一
山辺こどもクリニック 板垣 勉
勝島小児科医院 勝島矩子
鶴岡市立荘内病院小児科 伊藤末志
山形市立病院済生館小児科 坂本美千代 秋場伴晴

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