ワクチンの安全性に関する諮問委員会、 2002年12月

(Vol.24 p 115-116)

ワクチンの安全性に関する諮問委員会(The Global Advisory Committee on Vaccine Safety; GACVS)が2002年12月16〜17日にスイス・ジュネーブで開催された。委員会では麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチンと自閉症、 B型肝炎ワクチンと小児白血病、 インフルエンザワクチンと眼呼吸器症候群(oculorespiratory syndrome)、 アルミニウム含有ワクチンとマクロファージ筋膜炎(macrophagic myofasciitis)などとの関連性についての検討がなされた。アルミニウム含有ワクチンとマクロファージ筋膜炎については1999年9月および2002年6月に開催された委員会での結論に加えるものはなく、 その他の項目については以下に示す。

MMRワクチンと自閉症:MMRと自閉症との関連性についての11件の疫学研究を委員会において厳密に検討し、 現時点でMMRワクチンと自閉症との関連性を証拠づけるものはないと結論付けた。また3件の基礎研究も検討され、 自閉症と炎症性腸疾患を合併した小児の消化管における麻疹ワクチン由来のウイルスの存在に関しては、 引き続き調査が必要とされた。麻疹、 ムンプス、 風疹の単味ワクチン使用を支持する根拠も得られていないことから、 現在のMMRワクチンに関する方針の変更はなかった。

眼呼吸器症候群(oculorespiratory syndrome:ORS):ORSは新たに2000年にカナダで報告された不活化インフルエンザワクチンの合併症である。ORSは眼の発赤と急性呼吸器症状(呼吸不全、 咽喉閉塞感、 胸部不快感などを含む)、 および顔面の浮腫を呈する。2000/01シーズンでは症例の96%が、 カナダのワクチン製造会社2社のうち1社の製造したワクチンと関連していた。2001年にはワクチンの製造工程が変更され、 症例数は減少した。現在ORSの原因は分かっていないが、 同様の事例が1995〜96年にヨーロッパで発生している。本事例は、 以前よりある新しい鼻腔内投与インフルエンザワクチンの安全性に対する懸念と合わせて、 インフルエンザワクチンの評価と管理に関する新たな議題を提唱しており、 委員会はワクチンの安全性確保に必要なこの件について検討を行っていくことを決定した。

B型肝炎ワクチンと白血病:2002年6月にGACVSは、 出生時のチメロサール含有B型肝炎ワクチン接種とリンパ芽球性白血病の発生との関連はいまだ信頼するに至らず、 なおかつそのリスクがあったとしても、 B型肝炎ワクチンによって得られる利益のほうが上回るとの結論を出した。その後4件の研究を検討したが、 いずれもB型肝炎ワクチンや乳児に対するワクチンと白血病との関連性を示唆していなかった。現在米国CDCにおいて調査が行われており、 委員会はこの問題について引き続き監視していく。現在のB型肝炎ワクチンに関する方針の変更はなかった。

(WHO、 WER、 78、 No.4、 17-20、 2003)

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