温水環境におけるレジオネラ宿主アメーバ類

(Vol.24 p 34-35)

国立感染症研究所(感染研)・寄生動物部では、2001(平成13)年度より厚生科学研究「温泉・公衆浴場、その他の温水環境におけるアメーバ性髄膜脳炎の病原体Naegleria fowleri の疫学と病原性に関する研究」を進めている。研究の中心はNaegleria 属アメーバ類に関してであるが、その分離の過程で多くのレジオネラの宿主アメーバが分離されている。その実態の概要を報告する。

全国14地域の地方衛生研究所(地研)の協力を得て237施設から試料を得た。アメーバの一次分離は各地研で行うこととし、単離したアメーバコロニーを感染研に送付して形態的、生化学的性状から同定を行った。アメーバが陽性となった施設はおおむね64%(0〜93%)に及んだ。237施設からの685検体は主に内風呂、露天風呂からの浴槽水で、その他にジャグジー、薬湯等からの試料も含まれた。浴槽ごとのアメーバ陽性率は、0〜100%と場所により大きな差があるものの、概して30〜60%の間にあった。アメーバ類ごとの検出率はPlatyamoeba (24%)が最も高く、次いでNaegleria (16%)、Hartmannella (10%)、Echinamoeba (7.0%)、Acanthamoeba (5.8%)、Vannella (1.5%)の順で、全国的に同様の傾向が認められた。このうちPlatyamoeba を除き、他のアメーバはレジオネラの宿主として知られているものであった。また、浴槽の種別が特定できる602試料(内湯440試料、レクリエーション用浴槽40試料および露天122試料)について集計したところ、浴槽の種類によって検出されるアメーバの種類や検出率に差は認められなかった。また、アメーバの検出状況と水温やpH、泉質、あるいは清掃・消毒等の管理状況との関係も明確ではなかった。

浴槽排水は10地域、29施設から45検体採取し、25施設38試料からアメーバが検出された。排水ではNaegleria (47%)の検出率が最も高く、次いでPlatyamoeba (36%)、Hartmannella (33%)、Acanthamoeba (33%)、Echinamoeba (20%)、Vannella (4.4%)の順であった。具体的な数値には触れないが、排水系では単位試料水当たりのアメーバ数は浴槽水に比して明らかに多数であった。

今回の調査では浴槽から高率にアメーバが検出され、その大半がレジオネラの宿主アメーバであった。すなわち、全国各地の温泉浴槽はレジオネラの定着、増殖を許す環境となっている事実が確認された。排水管のアメーバ汚染が高く、ここから浴槽へアメーバの移動が起こることも予想される。浴槽における微生物対策は、排水系を含めた総合的な管理が必要となることを示す結果でもある。

本報告は平成13年度厚生科学研究費報告書(H13-生活-042)からの抜粋である。

国立感染症研究所・寄生動物部
八木田健司 泉山信司 遠藤卓郎

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