輸入カキが原因と推定されるShigella sonnei による食中毒の発生

(Vol.24 p 3-3)

2001年末にShigella sonnei による赤痢の広域集団事例が発生した(本号5ページ参照)。国立感染症研究所細菌第一部では、 地方衛生研究所等から送付された、 2001年11月9日〜2002年3月24日までの患者および無症候性患者からの分離株325株と、 2001年11月末の韓国産輸入冷凍カキからの分離株10株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による解析を行った。S. sonnei の分離株数は11月28日から1日12株と劇的に増加し、 12月中の分離株数は228株に上った。疫学的な調査結果から11府県にわたって28名が特定の加工業者からのカキを喫食していることが明らかになった。また、 当該業者においては韓国産の輸入カキと国産カキを使用していた事実も明らかにされた。さらに、 11月下旬に輸入、 冷凍保存されていた韓国産カキからS. sonnei が国立医薬品食品衛生研究所により分離された。

制限酵素Xba IによるPFGE解析結果から、 ヒト由来293株および輸入カキ由来10株が同一あるいは極めて類似したパターンを示し(タイプA)、 ヒト由来32株がそれとは異なるパターンを示している(タイプB-L)ことが明らかになった。 293株のタイプA株のうち、 PFGEパターンがのものと1バンド異なる株が20株あり、 2バンド異なる株が11株、 3バンド異なる株が1株あった。同一と考えられるタイプAの株のうち、 Bln Iによる解析を行った127株についてはバンドが1本異なるパターンを示す株が19株、 2本異なるものが7株あり、 残りはすべて同一パターンを示した。特定業者由来のカキを喫食した28名由来株のうち27株と冷凍輸入カキからの分離株はXba Iの他にBln IおよびSpe IによるPFGE解析においてもそれぞれ同一パターンを示した。1株についてはXba Iによる解析で1バンド異なるパターンを示した。また、 12月下旬に韓国産カキの輸入禁止措置が取られた後も同一タイプと考えられるタイプAの株の分離が2002年3月初旬まで続いていた。タイプAを示す株のうち、 138株は6府県の保育園、 幼稚園および小学校における集団発生由来株で、 その原因はすべて不明であった。ディスク法によるアンピシリン、 ストレプトマイシン、 カナマイシン、 ゲンタマイシン、 テトラサイクリン、 ST合剤、 トリメトプリム、 ナリジクス酸、 クロラムフェニコール、 セフォタキシム、 シプロフロキサシン、 ホスホマイシンの12薬剤に対する感受性試験の結果から、 タイプAを示す40株のうち、 33株についてはストレプトマイシン、 テトラサイクリン、 ST合剤、 トリメトプリム、 ナリジクス酸に耐性を示した。タイプB-Lについては表1のような薬剤耐性パターンを示した。

以上の結果から、 2001年末の赤痢の発生は韓国産カキを原因とするものであることが強く示唆された。また、 輸入されたカキが複数の地域の業者で国内産のカキに混入され、 長期間にわたって患者の発生源となっていた可能性も示唆された。

国立感染症研究所・細菌第一部
寺嶋 淳 田村和満 広瀬健二 泉谷秀昌 渡辺治雄
国立医薬品食品衛生研究所 宮原美知子 小沼博隆

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