インフルエンザ集団発生、 2002年7〜8月−マダガスカル

(Vol.23 p 324-324)

2002年7月中旬にマダガスカルの厚生省は、 国の南東部の高地にある村で急性呼吸器疾患による死亡者が増加しているとの報告を受けた。ウイルス分離の結果、 インフルエンザウイルスA/H3N2型が検出された。7月下旬にも別の地区で同じような集団発生がみられた。

CDC、 WHOなどで構成された国際チームにより、 全国規模のインフルエンザ様疾患サーベイランスを実施した結果、 9月19日の時点で111地区のうち13地区から30,304人の感染者、 754人の死亡者が報告された。その85%は最も貧しい地区の一つであるFianarantsoa州からの報告であった。その州の3地区で採取された検体からインフルエンザウイルスA/H3N2型(A/Panama/2007/99様株)が検出され、 これは2002年用南半球と2002/03シーズン用北半球のワクチン株とよく一致していた。

今回の集団発生の原因となったA/Panama/2007/99様株はここ数年世界中で流行していたものである。これだけ広範囲での呼吸器疾患の罹患率の上昇と、 異常に高い致死率が地方の高地にある地域から報告されたのには、 いくつかの要因がある。地方の村での過密な集団生活、 異常に寒くて雨の多い冬、 政情不安のため栄養失調や医療資源の不備が2001年12月〜2002年6月までさらに悪化していたこと、 などである。

今回の集団発生は、 開発途上国でのインフルエンザ集団発生と地球規模で流行するインフルエンザの対策にいくつかの重要な教訓を与えてくれた。地方で起こったため、 当局による集団発生の認知と対策が遅れてしまった。首都ではインフルエンザサーベイランスを実施していたが、 最もひどい被害地では何のデータも入手できなかった。他の多くの開発途上国と同じくマダガスカルでは栄養失調、 地方における低い医療サービス、 限られた感染症サーベイランス、 細菌性二次感染を治療する抗菌薬の不足、 インフルエンザワクチン入手の困難さ、 集団発生の評価と対策に複雑な努力を要するインフルエンザについての知識のなさなどの問題点がある。

調査チームはインフルエンザサーベイランスの強化、 国民や公衆衛生関係者へのインフルエンザに関する教育、 地方での医療サービスの改善、 インフルエンザで細菌性の二次感染を治療するのに十分量の抗菌薬の保証、 などを勧告した。

(WHO、 WER、 77、 No.46、 381-384、 2002)

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