エコーウイルス9型による無菌性髄膜炎の流行−高知県

(Vol.23 p 197-197)

高知県では2002年5月に入り感染症発生動向調査定点より搬入された検体からエコーウイルス9型(E9)が検出されるようになった。当初、 無菌性髄膜炎(AM)からの検出は少なく、 5月初旬〜中旬にかけて10名の患者から検出されたが、 臨床診断名は不明熱性疾患5、 咽頭結膜熱2、 ヘルパンギーナ1、 感染性胃腸炎1、 AM 1であった。AMからの検出は5月下旬から多くなった。

7月5日現在、 58名の患者から66株のE9を検出した。58名の臨床診断名はAM 35、 不明熱性疾患等16、 咽頭結膜熱5、 ヘルパンギーナ1、 感染性胃腸炎1であった。

E9が検出されたウイルスの検査材料は、 咽頭ぬぐい液(咽頭うがい液を含む)36、 髄液25、 便5であった。58名のうち複数の検査材料を用いてウイルスの検出を行った患者は8名で、 咽頭ぬぐい液と便が5、 髄液と咽頭ぬぐい液が3であったが、 これらのすべての材料から検出ができた。しかし、 流行期間中のAM(検出できなかった検体を含む)だけの依頼検体の検出率を見てみると髄液が47検体中25株(53%)、 咽頭ぬぐい液が16検体中15株(94%)と検出率に差が認められた。この結果から、 今回のような流行時の検体選択については患者負担やリスクも含め一考する必要があると思われる。

これまでにE9ウイルスが分離されたAM患者は35症例で、 年齢別にみると2歳(3症例)、 3歳(5症例)、 4歳(1症例)、 5歳(8症例)、 6歳(5症例)、 7歳(4症例)、 8歳(4症例)、 10歳(2症例)、 12歳(1症例)、 13歳(1症例)、 不明(1症例)であり、 特に低年齢で発症する傾向はない。また、 男女差も認められなかった。

E9分離時の細胞感受性はRD-18S、 LLC-MK2細胞が良く、 これらの細胞を用いて同定を行った。同定には、 市販のエンテロウイルス混合血清、 単味抗血清、 および国立感染症研究所より分与のエコーウイルスプール抗血清(EP95)を用いた。

本県では同ウイルスの流行はあまり経験がなく、 1990年7月に6株分離されているが、 以降は今年に至るまで検出されていない。よって、 13歳以下の年齢層ではほとんどが抗体を持っていないと考えられ、 流行の拡大が懸念される。すでに、 現時点において患者発生およびE9の検出も全医療圏で認められ、 県下の全域に拡がりをみせている。流行が始まり3カ月目に入ったが、 現在もAMの検体が多く搬入されている。流行はまだまだ続くものと思われる。今後の動向を監視していきたい。

高知県衛生研究所
千屋誠造 永安聖二 小松照子 山脇忠幸 上岡英和

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