OzFoodNet食品媒介性疾患のサーベイランス−オーストラリア

(Vol.23 p 204-205)

OzFoodNetは、 食品媒介性疾患についての実地疫学調査および既存のサーベイランスシステムの改善を目的として、 疫学者と微生物学者が協力するネットワークとして2000年に設立され、 2001年以来Communicable Diseases Network Australia(CDNA)を代表するものである。2001年第3四半期(7〜9月)のオーストラリア6州における、 食品媒介性疾患の発生状況と特定の食品媒介による集団発生について、 以下にまとめた。

カンピロバクター腸炎:4,014例報告され、 1998〜2000年同期報告数の平均より25%増加した。Queenslandで、 レストランでのアヒルの肝臓喫食よる小規模の集団発生が1件あった。

サルモネラ症:1,081例報告され、 4件の集団発生の感染源が同定された。期間中、 Salmonella Typhimurium[phage type (PT) 126と135]、 S . Stanleyが多く報告され、 特記すべきことは、 国内の広範囲にわたってS . Typhimurium PT126が出現したことである。5つの地区で、 報告数の多い血清型上位5位内にS . Typhimurium PT126が含まれていた。

リステリア症:14例の報告があり、 うち5例がWestern Australiaからの報告である。妊娠に関係しない患者年齢の中央値は43〜83歳の間である。Tasmaniaにおいて、 胎児への垂直感染1例の報告があった。

腸管出血性大腸菌感染症:報告は7例で、 4例がSouth Australia、 3例がQueenslandからの報告であった。感染源はいずれも不明で、 すべて散発事例と思われ、 患者年齢の中央値はSouth Australiaで22歳、 Queenslandで7歳である。英国からの旅行者(21歳男)が溶血性尿毒症症候群と報告されている。

エルシニア症:全国的な届け出疾患から除外されているが、 ほとんどの地区は依然報告を受けており、 期間中11例の届け出があった。ここ数年、 エルシニア症の報告は、 諸外国と同様に減少傾向にある。

その他:赤痢86例、 腸チフス13例が報告されている。

集団発生:食品媒介と推定された集団発生は17件報告された。全体で約244名が感染し、 7名が入院したが、 死亡者はなかった。そのうち10件はレストランにおける食事に、 3件が持ち帰り用食品または配達された食事に関連した集団発生であった。地域における流行が3件あり、 2件は州の境界を越えて発生したものである。1件は、 本来飲料用でない未殺菌のペット用のミルクを原因としたクリプトスポリジウム症の小規模な集団発生であった。

中国産のピーナッツを介したS . Stanleyの流行が発生し、 OzFoodNetにはこのピーナッツに関連したサルモネラ症27例が報告された。政府は全国的にこの汚染製品の回収をおこない、 カナダ、 英国に対して、 同ブランドのピーナッツに関連したサルモネラ患者発生の注意を喚起した。また、 S . Typhimurium PT126の増加も問題となり、 以前に報告された州以外からも発生が報告されている。

OzFoodNetでは、 オーストラリアで最も報告の多い腸管感染症であるカンピロバクター腸炎について、 感染のリスク要因を調べるための症例対照研究を9月から開始した。今後12カ月間で全国からの症例、 対照各約 1,200名を対象とする予定である。また、 国内の胃腸炎疾患罹患率の推定を目的とした、 電話による全国的な胃腸炎疾患調査も開始した。これらの調査・研究は、 今後の食品媒介性疾患の原因究明のために重要な情報となるであろう。

(Australia CDI、 26、 No.1、 22-27、 2002)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る