エコーウイルス13型の分離状況−大阪市

(Vol.23 p 121-121)

2001年11月〜2002年3月までの期間に、 主として大阪市感染症サーベイランス検査事業に供与された患者検体から、 計9株のエコーウイルス13型(E13)が分離された。患者は本市および近隣市に居住していた0〜9歳の小児で、 いずれも散発事例であった。各患者の臨床診断名は無菌性髄膜炎(6名)、 感染性胃腸炎(2名)および不明発疹(1名)であった。各患者に認められたその他の臨床症状は、 38〜39℃の発熱(8名)、 嘔吐(5名)、 頭痛(2名)および上気道炎(1名)であった()。

当所においてE13が最初に分離された患者検体は、 不明発疹と診断された近隣市在住の1歳児の咽頭ぬぐい液で、 2001年11月19日に採取された。この検体をRD-18SおよびVero細胞に接種した結果、 RD-18S細胞において明瞭なエンテロウイルス(EV)様の細胞変性効果(CPE)が認められたことから、 ウイルス分離陽性と判断した。この分離ウイルスの同細胞における感染価は、 106 TCID50/0.1mlであった。抗EVプール血清(デンカ生研製およびEP95)および抗コクサッキーウイルスA群10型(CA10)、 抗CA16、 抗EV71の各単味血清を用いてウイルス中和試験を行ったが、 試験は不成立であった。

EVのVP4 遺伝子前後を特異的に増幅するプライマー(EVP2およびOL68-1)を用いたRT-PCRにおいて、 約650bpの特異的フラグメントの増幅が認められたことから、 分離ウイルスはEVであることが確認された。このEVのVP4遺伝子(207nt)の塩基配列を決定し、 さらにVP4遺伝子を用いたN-J法による系統解析を行った結果、 この分離EVの血清型は過去6年間に当所において分離されたEV(Kubo et al., Emerg. Infect. Dis. 2002)とは異なることが明らかとなった。次に、 EVのVP1から2C領域を特異的に増幅するプライマー(Caroet al., J. Gen. Virol. 2001)を用いてRT-PCRを行い、 特異的に増幅された約1,400bpのフラグメント中に存在するVP1遺伝子の3'側領域約400ntの塩基配列を決定し、 これに対してBLAST2 search (http://blast.genome.ad.jp/)を行った結果、 本分離ウイルスはE13に最も相同性の高いことが明らかとなった。また、 抗E13単味血清(デンカ生研製)を用いた中和試験において、 本分離ウイルスは良好に中和された。

以上の結果を考慮して、 その後RD-18S細胞のみにEV様のCPEを示した分離ウイルスに対しては、 上記抗EVプール血清とともに抗E13単味血清についても中和試験を行った。2001年11月から現在までに計9株のE13を分離・同定しているが、 いずれの分離ウイルスにおいても抗E13単味血清による明瞭な中和反応が認められた。

大阪市立環境科学研究所
久保英幸 入谷展弘 勢戸祥介 村上 司 春木孝祐

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