細菌性赤痢患者多発傾向−静岡県

(Vol.23 p 119-119)

2001年12月下旬〜2002年2月初旬にかけて、 静岡県東部、 中部地区で細菌性赤痢患者37名の発生が確認され、 これらの患者は次の4グループに分けられた。

 グループ1:2001年11月下旬から西日本を中心に発生した韓国産カキを原因食品とした事例。患者数7名(12月:4名、 1月:3名)、 うち海外渡航者0名。

 グループ2:F市にある保育園で発生した事例。患者数4名(12月:1名、 1月:3名)、 うち海外渡航者0名。

 グループ3:G市にあるペンションでテニス合宿(12月27〜29日)したグループに発生した事例。患者数15名(12月:1名、 1月:14名)、 うち海外渡航者3名。

 グループ4:S市にある小学校で発生した事例。患者数11名(2月:11名)、 うち海外渡航者0名。

分離菌はいずれも、 Shigella sonnei I相菌であった。これらの分離菌ついてセンシディスク法(BBL)による薬剤感受性試験(アンピシリン、 ストレプトマイシン、 テトラサイクリン、 シプロフロキサシン、 カナマイシン、 セフォタキシム、 クロラムフェニコール、 ST合剤、 トリメトプリム、 ナリジクス酸、 ホスホマイシン、 ゲンタマイシンの12薬剤)を実施した。その結果、 グループ1および4から分離の18株はストレプトマイシン、 テトラサイクリン、 ST合剤、 トリメトプリム、 ナリジクス酸の5剤に耐性、 グループ2および3の19株は12薬剤すべてに感受性を示した。さらに、 並行してパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)を実施し、 制限酵素(Xba I)切断泳動パターンによる各グループごとの比較を行った。写真のとおり、 グループ1および4は同一の泳動パターンを示し、 グループ2および3はこれらとは全く異なった泳動パターンを示した。また、 各グループ内の比較では、 分離株はほぼ同一の泳動パターンを示していることから、 これらの患者は共通の感染源の可能性が示唆された。なお、 これらの分離株について国立感染症研究所細菌部(寺嶋 淳博士)にPFGE検査を依頼したところ、 グループ1および4はtype A、 グループ2はtype F、 グループ3はtype Gとの結果報告があった。

グループ1は保健所が行った疫学調査の結果から、 韓国産カキを喫食した事例であることが明らかとなった。また、 グループ4は疫学的解析結果から、 韓国産カキの関与が疑われるが原因食品や感染源を特定することはできなかった。

最近の県内における細菌性赤痢患者発生状況は、 2000年11月にY市の小学校で発生した集団発生事例(患者数12名:海外渡航者0名)以外は、 毎年数例の散発事例(ほとんどが海外渡航者)のみであったが、 本年度は集団発生4件があり、 増加傾向を示した。これらの集団発生事例では、 患者のほとんどが海外渡航歴はなく国内の感染が考えられるが、 感染源や感染経路を特定することができない場合が多い。今後、 疫学調査の手法や検査法などについて検討が必要であると考える。

静岡県環境衛生科学研究所・微生物部 増田高志 有田世乃 川森文彦 秋山眞人

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