HIVスクリーニング検査の陽性数の動向とその解析

(Vol.23 p 111-111)

2001年における保健所等HIV無料検査での陽性数(速報値)は174であり、 2000年の陽性数112に比べ55%と大幅な増加を示した(表1図1図2)。また都道府県別では東京が93と最も多く、 次いで大阪(25)、 愛知(20)、 神奈川(17)の大都市に多かった。献血者における2001年のHIV検査陽性数(速報値)も79と過去最高であったが、 2000年の67例に比べ増加率は18%であった。

2001年のHIV感染者(AIDS未発症者)の報告数(速報値)は614であり、 2000年の462に比べ33%増であった(図2)。これらの結果から、 保健所等の無料HIV検査を受けて陽性と分かった例が昨年大幅に増加し、 一方、 献血者中のHIV検査陽性者は増加しているものの、 その増加率は保健所等無料HIV検査での増加率の4分の1であり、 HIV感染者報告数の増加率に比べても2分の1以下と低いことが分かった。

HIV検査の希望者数がここ数年減少傾向にあるため、 保健所等の無料HIV検査をより有効な検査にするため、 休日検査・夜間検査の充実に加え、 昨年よりホームページによる情報提供、 STD検査の導入、 NAT検査の一部導入や、 様々な啓発活動などの工夫がなされている。2001年における保健所等無料検査での陽性数の急増が、 それらの効果を反映したものである可能性も考えられ、 今後の動向が注目される(図3)。

なお、 2001年の5月〜10月の間、 HCV抗体検査希望者に対して、 保健所でのHIV検査との同時無料検査を実施したため、 この間HIV検査数が2倍近くに増加した保健所も多く見られた。ただし、 HCV抗体検査希望者の多くはHIV感染リスクの高い本来のHIV検査希望者とは異なる集団で、 HCV抗体検査による検査数の増加と今回のHIV検査陽性数の大幅な増加との間の関連は少なかった。しかしながら、 HCV検査希望による増加も含め、 HIV検査数の増加は、 未検査で見落とされているHIV感染者の把握につながる可能性があり、 今後の検査数と陽性数の動向が注目される。

神奈川県衛生研究所ウイルス部 今井光信
(厚生労働省HIV検査法・検査体制研究班)

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