仕出し弁当を原因とした毒素原性大腸菌による食中毒事例−横浜市

(Vol.23 p 96-96)

2001(平成13)年6月29日、 横浜市内にある同一事業所内の複数のグループから、 腹痛,下痢等の食中毒症状を呈している旨、 所轄保健所に連絡が入った。ただちに調査を実施し、 情報収集がなされた。その結果、 いずれもがA区内の飲食店の仕出し弁当を摂食していたことが判明した。

本事例での患者発生は2001年6月26日〜7月2日に及び(図1)、 調査対象者は228グループ1,658名に達した。仕出し弁当の摂食者は1,598名で患者数は472名(発症率30%)であった。主症状は下痢(97%)、 腹痛(77%)、 発熱(40%)および嘔吐(9.5%)であった。なお、 発熱は39℃〜40℃の高熱の患者もみられた()。

細菌学的検査は、 患者便 124検体、 調理従事者便20検体および手指のふきとり5検体、 検食19検体およびふきとり(施設内の容器・器具・設備)18検体について行った。その結果、 患者便57検体(46%)から、 また、 従事者便2検体(10%)から耐熱性毒素産生の毒素原性大腸菌O25:NMが検出された。食品およびふきとりからは原因菌は検出されず、 原因食品は特定されなかった。

分離された毒素原性大腸菌O25:NMの18株について制限酵素Xba Iによるパルスフィールド・ゲル電気泳動を行った(図2)。UPGMA法による遺伝子解析の結果、 17株のパターンは同一であった。また、 1株(レーン5)は他の株と1バンド異なっていたが、 解析の結果,類似度0.98であり同一クローンによる集団であると思われた。

本事例は疫学調査により当該飲食店が6月26日〜27日に提供した仕出し弁当が原因食であることが推定された。また、 6月25日からの3日間は、 例年に比べ気温が非常に高かった(最高31℃)時期であり、 気温が毎日更新された時期にも当たり、 弁当の温度管理および生産能力を超えた弁当の提供が、 今回の食中毒発生の要因であったと思われる。

横浜市衛生研究所
武藤哲典 山田三紀子 鈴木正樹 北爪晴恵 松本裕子 藤井菊茂
横浜市鶴見保健所
大橋敏夫 有竹義男 木崎昌江 中条圭伺 鈴木絵美 関口芳敬 平田大登

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