梅毒の血清反応検査

(Vol.23 p 88-88)

梅毒検査は、 STS (serological test for syphilis)と呼ばれる抗原にカルジオリピンを用いた非特異的な検査法と、 抗原にTreponema pallidum (Tp)を用いた特異的なTp系の検査法を組み合わせて、 まず定性検査を行い、 陽性者に定量検査を行う。定性検査の結果の解釈を表1に、 定量検査の抗体価の相互関係を表2に示す。検査法によって抗体価が大きく異なる。STSとしてのRPR (rapid plasma reagin)とTPHA (Tp hemagglutination test)の抗体価クロス集計を行うと、 病期・病態に特徴的なパターンが見られる。これを応用すると潜伏梅毒の病期、 感染力の有無などの判定が可能になる。以下に概略を述べる。表2の“抗体価の程度”に従い、 両者の抗体価が同じ範疇の場合は相同域、 RPRがTPHAより高い範疇の場合はRPR優位域、 逆にTPHAがRPRより高い範疇の場合はTPHA優位域とみなす。

I期梅毒のパターン表3のごとくRPR優位域が4分の3強、 相同域が5分の1強で、 TPHA優位域はわずかに35分の1弱である。すなわち、 I期梅毒のクロス抗体価は圧倒的にRPR優位域にある。潜伏梅毒のクロス抗体価がこの域にあればI期梅毒の時期に相当するとみなしてまず間違いない。

II期梅毒のパターン:II期梅毒は感染後2〜3カ月頃から発症するので“低い”範疇はほとんど無い。I期からII期への時間の経過とともに抗体価は上昇しつつRPR優位域から相同域へ、 相同域からTPHA優位域へとシフトしてゆく。

早期潜伏梅毒のパターン:I期梅毒とII期梅毒のパターンを合わせた形である。RPR優位域は4分の1弱とII期梅毒のそれに比べると低いが、 TPHA優位域は逆に4分の1強とII期梅毒に比べて4倍程増加し、 I期梅毒に比べると9倍増加している。相同域は2分の1とII期梅毒よりは幾分減少しているが、 それでもI期梅毒の2.4倍となっている。

晩期梅毒のパターン:TPHA優位域が圧倒的で、 RPR優位域は皆無である(表4)。これらの患者の性交相手は配偶者で平均婚姻期間が12.3(1〜30)年であったが感染者はいなかったた。クロス抗体価がこの域にあると感染力はもはや無いとみなされる。

梅毒治療後のパターン:RPRは“低い”範疇の抗体価の比率が98%であるのに対して、 TPHAは85%である。治療後の経過観察にはSTSを用いる根拠である。

大里クリニック 大里和久

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