欧州を中心とする最近のエコーウイルス13型および30型の流行

(Vol.23 p 69-70)

欧州ではエコーウイルス13型(E13)が2000年にイングランド&ウェールズとドイツで流行し、 またエコーウイルス30型(E30)が2001年にドイツと英国で同時に流行した(本月報Vol.22、 No.10外国情報参照)。

 エコーウイルス30型

E30は分離頻度の高いエコーウイルスの型の一つで、 数年ごとに流行する。E30の流行は、 2000年にフランス、 アイスランド、 コソボ、 オランダで、 2001年にイングランド&ウェールズ、 スコットランド、 ドイツ、 アイルランドでみられた。イングランド&ウェールズ、 スコットランド、 ドイツでは2000年に比較的小さな流行も報告されている。過去のE30の流行はイングランド&ウェールズでは1996年、 ドイツでは1997年に起きている。

アイルランド:2000年の初めにE30の分離が増加し、 患者数は2001年5〜7月にピークを迎えた。そのほとんどはウイルス性髄膜炎と関連し、 子供からも大人からもウイルスが分離された。前回の流行は1996年であった。2000年にはE6とE33も流行している。

アイスランド:2000年9月〜2001年1月にE30による髄膜炎が流行した。2000年9〜12月にE30が63株分離され、 うち髄液から52株が分離された。この期間中、 E6とE7も分離された。

フランス:2000年に分離されたエンテロウイルス1,262株のうち41%をE30が占めていた。

ベルギー:2001年に無菌性髄膜炎患者84例中43例からE30が分離され、 他にE6が17例、 E13 が2例であった。

オランダ:2000年に分離されたエンテロウイルス1,215株のうち120株(10%)がE30であり、 E30を含むすべてのエンテロウイルス分離のピークは6〜7月であった。

コソボ:数人の髄膜炎患者(すべて2000年9〜11月に短期間入院)から得た髄液の80%からE30が分離されていることから、 流行はE30によるものと思われた。

 エコーウイルス13型

E13は比較的稀なエコーウイルスの型の一つ。イングランド&ウェールズで1990〜1999の10年間に分離されたエコーウイルス計4,405株中E13は25株(0.02%)であった。

欧州:E13の流行は、 2000年にイングランド&ウェールズ、 スコットランド、 アイルランド、 ドイツ、 フランス、 オランダで発生し、 ドイツでは、 2001年に前年の2倍以上のE13の分離が報告された。オランダにおいても小流行が発生し、 2001年に分離されたエンテロウイルス473株のうち、 E13は31株(7%)であった。2000年と比較すると、 2001年のエンテロウイルスの活動ピークは約3カ月遅かった。フランスでは、 分離されたエンテロウイルス1,262株のうちE13が32%を占めた。オランダにおけるE13の分離のピークは、 2000年が10月、 2001年が9月と10月であった。

米国:1970〜2000年の間にCDC に報告された45,000株のエンテロウイルスのうち、 E13は65株とごく稀であったが、 2001年1〜8月にかけて76株が報告された。

オーストラリア:西オーストラリア州では、 2001年3〜7月のエンテロウイルスサーベイランスにより、 大規模な無菌性髄膜炎流行の患者21例中12例からE30が、 4例からE13が分離された。2001年以前の過去4年間では、 無菌性髄膜炎患者からのE30およびE13分離の報告はなかった。ニューサウスウェールズ州(NSW)とオーストラリア首都圏(ACT)において、 これまでE13はごく稀にしか分離されていなかったが、 2001年1〜7月にE13の増加が報告された。

これらのデータから、 特定の型のエコーウイルスの流行がこれまで考えられていた以上に広い地域で、 一つの大陸内にとどまらず、 他の大陸にまたがって発生することが示唆された()。

(Eurosurveillance Weekly、 No.7、 2002)

IASR編集委員会註:わが国では、 2000年にはE13の分離は0、 E30は41であったが、 2001年には福島県でE13の流行も報告(本月報Vol22、 No.12参照)され、 E13分離は44、 E30分離は16報告されている(2002年2月27日現在)。過去20年間の分離状況はhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/ent82002.gif参照。

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