三重県における2001/02シーズン最初のA(H1)型インフルエンザウイルスの分離例

(Vol.23 p 38-39)

2001年12月14〜17日に鈴鹿地区の医療機関を受診し、 インフルエンザ迅速診断抗原検出キットにてA型インフルエンザに陽性を示した5例の患者からのインフルエンザウイルス分離状況を報告する。5例の患者から採取された鼻腔吸引液にペニシリンおよびストレプトマイシンを加えたものを検査材料とした。これをMDCK細胞および8日発育鶏卵を用いてウイルス分離を行った。12月29日現在、 MDCK細胞では5例中3例からインフルエンザウイルスAソ連(H1)型が分離され、 このうち1例からは8日発育鶏卵からも分離されている。残りの2例は検査継続中である。

このウイルスが分離された3症例は5歳と6歳男児と30歳男性である。医療機関の診療情報提供書によると、 症例1は12月13日より38.3℃の発熱と咳嗽があり、 14日に受診したときには咽頭発赤と結膜充血症状も呈していた。症例2は6歳男児で、 12月14日、 幼稚園の帰りのバスで突然倒れすぐに受診した。来院時は39.5℃の発熱および悪寒を呈し意識がなかったが10分後に意識は回復した。症例3は30歳男性で、 子供が16日から発熱があり、 その付き添いで来院した父親であり、 家族内感染と思われた。いずれの患者もワクチン既往歴はなかった。

MDCK細胞で分離されたウイルスの0.75%モルモット血球に対するHA価は症例1が8HA、 症例2と3が16HAを示し、 発育鶏卵から分離されたウイルスは0.5%ニワトリ血球に対して256HAを示した。国立感染症研究所より分与された感染フェレット抗血清を用いてHI試験を行った結果、 3株とも抗A/New Caledonia/20/99(H1N1)血清に対してHI価は320(ホモ価640)、 抗A/Moscow/13/98(H1N1)血清では20(ホモ価1,280)、 A/Panama/2007/99(H3N2)では<10(ホモ価1,280)、 B/Johannesburg/5/99では<10(ホモ価160)、 B/Akita(秋田)/27/2001では<10(ホモ価40)を示した。これらの成績から昨シーズン流行のみられたA/New Caledonia/20/99(H1N1)類似ウイルスであると同定した。

これまでのところ、 三重県での集団かぜは5施設から報告されているが、 インフルエンザと診断された患者はいない。インフルエンザ患者報告数は除々に増加傾向を示している。しかし、1月4日現在本格的な流行は見られておらず今後の流行に注意が必要である。

三重県科学技術振興センター保健環境研究部
矢野拓弥 中野陽子 西香南子 杉山 明 中山 治
すずかこどもクリニック 渡辺正博

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