秋田市内で発生したA群レンサ球菌による家族内感染事例

(Vol.23 p 41-42)

劇症型溶血性レンサ球菌感染症など、 溶血レンサ球菌による重症事例は年間数十事例報告されているが、 家族内で重症溶連菌感染症に罹患した事例はほとんど見られない。A群レンサ球菌により、 親子で壊死性筋膜炎と蜂窩織炎を発症した事例について報告する。

症例1:男、 16歳。診断名は壊死性筋膜炎。経過は2000(平成12)年10月9日から右臀部痛が有り、 10月16日疼痛・発熱により入院。10月18日切開手術、 11月21日軽快退院。

症例2:女、 43歳、 症例1の母親。診断名は蜂窩織炎。2000(平成12)年10月12日頃から加療中の白癬菌症部分が化膿し、 10月19日受診、 入院した。抗生剤投与により10月23日軽快退院。

検査材料・方法:症例1は臀部膿、 症例2は足の膿を検査材料とし、 血液平板に塗布、 β溶血環を呈するコロニーについて性状試験を行い、 ヤトロンのストレプテックスにより群を決定した。

結果:症例1、 2の両者からA群レンサ球菌が分離された。分離株1株ずつについて血清型別したところ、 症例1由来株はT13、 症例2由来株はTB3264と異なった。両者が親子であることから、 分離平板から4コロニーずつ再度釣菌し、 血清型別を実施したとろ、 8株ともT13とTB3264の2種類の抗血清に凝集が見られた。症例1由来株T13(No.1)、 T13/TB3264(No.2)、 症例2由来株TB3264(No.3)、 T13/TB3264(No.4)の計4株についてM型別、 発赤毒素型検査を国立感染症研究所に依頼した。その結果、 4株すべてにおいてMタンパク質をコードするemm 遺伝子の塩基配列はemm81 と100%一致し、 M81型と考えられた。また、 spe 遺伝子としてspeB およびspeF 遺伝子をすべての株が保有していた。分離株4株はM型、 sep 遺伝子は一致したが、 T型別結果が一部異なった。このことはおそらくT型別時の消化の程度でT13とTB3264の凝集の強弱に差がでたもので、 同一のタイプと考えられ、 今後パルスフィールド・ゲル電気泳動で確認する予定である。

秋田県衛生科学研究所微生物部 斉藤志保子 八柳潤 伊藤 功
秋田組合総合病院整形外科 西澤暢浩
    〃   臨床検査科 伊藤優子
福島県衛生研究所微生物部 須釜久美子
国立感染症研究所細菌部  池辺忠義

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る