輸入野生ポリオウイルスによるポリオ症例への対応−ブルガリア
(Vol.22 p 323-323)

2001年5月にブルガリアで2例のポリオが報告された(発症は1例が4月中旬、 1例が5月、 本月報Vol.22、 No.8、 p.15参照)。ブルガリアでは1991年以来、 ヨーロッパでは1998年以来のポリオ症例で、 ポリオ根絶を目指すWHOヨーロッパ地域においては重要な意味を持つ。症例はいずれもジプシーの小児で、 2000年6月にインドで分離された株と近縁の株が分離された。ウイルスが同定された後、 ブルガリア保健省は接触歴の追跡調査、 周辺の小児のスクリーニング、 急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランスの強化、 ポリオワクチン集団接種などで対応した。

スクリーニング:1回目は4月下旬〜5月中旬に、 暴露された可能性の高い小児を中心に117人の便を検査し、 2例から1型ポリオウイルス野生株を分離した。ウイルスが分離された2例は無症状であった。2回目は、 7月〜8月にかけてエコーウイルス30型による髄膜炎の流行後、 全国の244人に対して行い、 7例からワクチン由来株を分離したが、 野生株は分離されなかった。最終的なスクリーニングが8月23日〜9月11日にかけて3歳未満の155人に対して行われたが、 野生株は分離されなかった。

ワクチン集団接種:4月19日に症例の出た地域でのポリオワクチン集団接種を行い、 さらに5月と6月に全国の0〜6歳児、 約47万人を対象にワクチン集団接種を行った。各々のワクチン接種率は94%、 および95%であった。また、 初期の接触者追跡調査で、 高リスク群の小児の半分は定期予防接種を完遂していないことが示されたので、 10月と11月に0〜4歳児を対象とした2度の集団接種を予定している。

これは、 10年間近くポリオのなかった国に、 経路不明であるがポリオウイルスが持ち込まれ、 免疫の低い集団に感染し、 数カ月にわたって伝播し続けた事例である。上記の対応により、 ポリオウイルス野生株の循環(circulation)は断ち切られたと思われる。

ワクチン接種率の低い集団において、 ポリオウイルス野生株は数年にわたって循環し続けることがある。WHOヨーロッパ地域事務局は、 AFPサーベイランスの強化とワクチン接種の推進を呼びかけている。

(Eurosurveillance Weekly、 No.45、 2001)

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