ホテルで発生したSalmonella Tennesseeによる集団食中毒−富山県

(Vol.22 p 292-292)

2001(平成13)年5月、 富山県宇奈月町でホテルの食事を原因とする集団食中毒が発生した。検査の結果、 患者および検食からSalmonella Tennesseeが検出された。概要は次のとおりであった。

5月24日、 宇奈月町にあるホテルで5月21日に宿泊した団体客の中に下痢・発熱を主症状とする患者が複数いる旨の届出があった。管轄保健所が調査したところ、 これら患者グループの他に、 同日同じホテルに宿泊した他のグループにも同様の症状を呈する患者がいることが判った。また、 20日の昼食喫食者および22日の宿泊者にも食中毒症状を呈する患者がいることが判明した。保健所では集団食中毒として、 より詳細な疫学調査と原因食品の検査を実施した。

患者・従業員の症状および便検査:患者は20日の昼食、 21または22日の夕食のいずれかを喫食していた。それぞれの患者発生率を表1に示した。潜伏時間は、 16〜25時間がもっと多く、 平均25.4時間であった。また、 患者の主な症状は、 下痢(97%)、 発熱(54%)、 腹痛(40%)であった。患者39人について検便を行ったところ、 32人からS . Tennesseeが検出され、 従業員44名の検便では、 調理員1名、 客室係4名、 食器洗浄係1名計6名から同菌が検出された。従業員のうち、 症状を呈したのは客室係の3名のみで、 他はいずれも無症状であった。なお、 従業員菌陽性者のうち食器洗浄係以外の5名は、 客に提供されたと同じ食品を喫食していた。

検食および食材の検査:検食の保存状態は極めて悪く、 夕食と翌日の朝食が同一容器に保存されており、 食品をメニューにより明確に区別することは困難であった。検査は、 始めラパポート培地にて選択増菌後、 塗抹、 分離を試みたが当該菌は分離されなかった。そこでEEM培地およびBuffered Peptone Water(B.P.W.)にて前増菌した後、 前述の方法を試みたところ、 当該菌が分離された。検査した食品、 食材、 水それぞれ50、 11、 2検体のうち食品14検体(甘エビの卵、 かまぼこ、 カジキマグロ、 ブラックタイガー、 卵焼き、 その他計50品目からなる14検体)からサルモネラが検出された。20、 21、 22日のいずれにも陽性食品が認められた。ふきとり6件と生食用原材料11検体は、 すべてサルモネラ陰性であった。これら分離菌の血清型別を実施したところ、 すべてO7、 HI相z29、 II相-であったので、 S . Tennessee食中毒と決定した。

考察:このホテルの調理室は1993(平成5)年に移転・改造されており、 設備や清掃状況は良好であった。しかし、 従業員の手洗いが不十分であったり、 冷蔵庫内で生肉と刺身用魚を並べる、 まな板を床に直置きするなど器具等取り扱いに不適切な点が見られた。また、 上記のように検食の保存方法にも問題がみられ、 衛生教育等を行なった。

食品から当該菌が検出できたが、 食品の保存方法が悪く、 どの食品が原因であったのか特定できなかった。14検体からサルモネラが検出された結果から、 調理段階での二次汚染の可能性が考えられるが、 保存中の検食間での相互汚染の問題があり、 明確でない。

なお、 本血清型は、 1996〜2000年の間、 わが国で分離されるヒト由来サルモネラの第11〜15位に位置し、 その年間分離数は、 最も多く分離されるS . Enteritidisのおよそ1/100程度である。富山県においてもヒトからの分離数は極めて少なく、 この20年間で散発患者から14株分離されているにすぎない。しかし、 富山市における河川水調査では、 分離サルモネラの第8位(分離数はヒト由来のおよそ2倍で)と比較的多く分離されている。

新川保健所 小林幹子 南部厚子
薬務食品課 堂高一彦
富山県衛生研究所 磯部順子

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