ボルネオ島で感染したレプトスピラ症の1例

(Vol.22 p 290-290)

レプトスピラ症は、 レプトスピラ属細菌の感染によって起こる人獣共通感染症である。今回我々はボルネオ島で感染し、 帰国後発症したレプトスピラの輸入感染例を経験したので報告する。

症例:28歳、 男性。主訴は発熱。2001年6月13日〜19日までボルネオ島に旅行。海水、 淡水での水泳、 洞窟探索などをする。6月26日に突然40℃台の発熱、 全身筋肉痛、 頭痛が出現した。近医受診も発熱が続くため、 29日に当院転院となった。入院時体温39.5℃、 脈拍 102・整。眼球結膜に貧血・黄染はないが、 充血を認めた。全身のリンパ節に腫脹を認める。胸・腹部異常所見なし。皮膚発疹なし。神経学的に異常所見なし。検査所見ではWBC 3,800/μl、 Hb 14.3g/dl、 Plt 83,000/μl、 T.Bil 1.5mg/dl、 GOT 267IU/l、 GPT 291IU/l、 LDH 462IU/l、 BUN 17.1mg/dl、 Cr 1.4mg/dl、 CRP 23.8mg/dlであった。末梢血塗抹標本上マラリア原虫陰性、 血液、 糞便培養で有意菌は検出されなかった。ボルネオへの旅行後に発熱が見られていること、 全身のリンパ節腫脹がみられること、 海水、 淡水への暴露があることなどより、 腸チフス、 デング熱、 A型肝炎、 レプトスピラ症、 全身リンパ節腫脹を来すウイルス感染などを考え、 6月30日夕よりシプロフロキサン 200mg 4T2Xを開始した。7月1日には解熱し、 全身状態が改善したため7月3日に退院した。国立感染症研究所細菌部にて6月29日、 7月17日のペア血清を用いてレプトスピラ抗体を測定したところ、 Leptospira interrogans serover hebdomadis に対する抗体が10倍から160倍へと上昇して陽性となり、 レプトスピラ症と確定診断した。

考察:現在、 本邦でのレプトスピラ症の発生は沖縄県を除いて稀なものとなっているが、 海外では全世界的に認められ、 特に東南アジアでは大流行している。近年レプトスピラ症の発生の特徴として、 水辺のレジャーやスポーツを介するものが目立って来ている(本月報Vol.22、 No.1参照)。今回の場合も、 淡水中で泳いだことが感染原因と考えられる。したがって、 レプトスピラ症の流行地では不用意に水に入らないこと、 特に洪水の後には絶対に入らないことが重要である。海外旅行者が年々増加している現在、 今後ともこのような事例が増加することが考えられる。旅行者に対するより一層の注意喚起が望まれる。

国立国際医療センター開発センター 石崎有澄美
国立感染症研究所細菌部 小泉信夫 渡辺治雄

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