「ずんだもち」による黄色ブドウ球菌集団食中毒事例−宮城県
(Vol.22 p 191-192)

2000(平成12)年8月14日、 宮城県栗原保健所管内の医療機関よりA施設で行われた法事に出席した4名が腹痛、 下痢、 嘔吐の食中毒症状で受診した旨の通報があった。保健所で調査した結果、 当日A施設では7組289名の法事が開催され、 そのうちの4組14名とA施設従業員1名が食中毒症状を呈し、 8月14日に2医療機関で手当を受け、 11名が入院したことが明らかになった。法事の会食は、 7組が正午に行われ、 発症は当日の午後3時〜5時であった。なお、 法事以外の会合出席者と施設に併設するレストランの利用客には同症状を呈した者はいなかった。詳細な聞き取り調査の結果から発症者の共通摂取食品は会食に提供された「ずんだもち」で、 これを原因食品と推定した。「ずんだもち」はB店で当日製造され、 お椀に盛りつけてA施設に納入されたことから、 AおよびBの両施設について調査を実施した。

A施設関連として検食用食品29、 ずんだもち残品1、 従業員手指ふきとり13、 環境ふきとり8、 従業員便11、 またB店関連として従業員手指ふきとり4、 環境ふきとり9、 従業員便4、 ずんだもち残品1、 販売ずんだもち残品1、 さらに法事出席者関連として患者便9、 患者吐物1、 持ち帰り折り残品6の総計97検体について食中毒原因菌検査を実施した。その結果、 黄色ブドウ球菌がA施設ずんだもち残品1、 A従業員便1、 B店のずんだもち製造に使用したボールのふきとり1、 B店ずんだもち残品1、 B販売ずんだもち残品1、 患者便7、 患者吐物1、 持ち帰り折り残品3の合計16検体から、 また、 エンテロトキシン産生性セレウス菌がA施設従業員手指ふきとり1、 A施般ふきとり2、 A従業員便1、 B従業員手指ふきとり1、 B店ふきとり2、 Bずんだもち残品1、 持ち帰り折り残品2の合計10検体から検出された()。

これらの結果から、 原因食品はB店で製造した「ずんだもち」と断定し、 B店での販売状況調査を行った。発生前日に当日と同じ数のずんだもちをA施設に納品していたが異常は認められなかった。また、 当日はA施般のほかに24人分の販売ずんだもちと223人分のクルミもちを他の施設に納入していたが、 A施般以外から発症者の報告はなかった。このことから、 B店においてずんだもち製造過程で製品の一部が原因菌で汚染され、 それがA施設に納入されたと考えられた。

16検体から検出された黄色ブドウ球菌はすべてがコアグラーゼII型・エンテロトキシンAおよびB型産生性であった。一方、 検出されたセレウス菌は3種類の異なる血清型を示したことから、 セレウス菌は共通の原因菌とは考えられず、 黄色ブドウ球菌が食中毒の原因であると推定された。検出した黄色ブドウ球菌のパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)によるDNA遺伝子解析結果をに示した。レーン1〜4はそれぞれのずんだもち残品、 レーン5はずんだもち製造に使用したボールのふきとり、 レーン6は患者吐物、 レーン7〜10は患者あるいはずんだもち喫食者の便から検出したそれぞれの黄色ブドウ球菌である。PFGEパターンにおいて7と10は150kb付近に他の菌株より1本バンドが多く認められるが他の領域のDNA切断パターンが一致しており、 これらの菌株はすべて同一菌に由来することを示していた。

宮城県保健環境センター
微生物部:齋藤紀行 佐々木美江 山口友美 畠山 敬 白石広行
古川支所:後藤つね子 日野久美子 氏家雪乃 小林妙子 及川敏彦 大揚 修
宮城県栗原保健所食品薬事班
伊藤 仁 中島 博 宍戸義典 加藤栄子 高内 淳 鈴木 功

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