小児咽頭ぬぐい液由来A群溶血性レンサ球菌のT型の年次推移における地域的特徴−秋田県
(Vol.22 p 116-117)

我々は、秋田県県北地区の1定点観測病院(小児科)において1996年6月〜1998年12月までに咽頭ぬぐい液から分離されたA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)のT型の年次推移について検討し、当該病院周辺の比較的限局された地域において、異なるT型の溶連菌が継時的に流行していた事実を本月報(Vol.20、No.2、p.37、1999)に報告した。今回は、県北地区の同定点病院において1998年4月〜2001年3月までに小児科咽頭ぬぐい液から分離されたA群溶連菌460株、および本荘・由利地区の定点病院において1999年1月〜2001年3月までに小児科咽頭ぬぐい液から分離されたA群溶連菌314株、計774株のT型別成績について報告する。

図1に小児科咽頭由来溶連菌の月別分離数を定点病院ごとの積み上げグラフで示した。1998年12月〜1999年7月の流行は、 1996年以降県内における最大規模の流行であった。また、同流行期においては特に県北定点病院で溶連菌の分離株数が多かった。その後、1999年10月〜2000年5月の流行、そして2000年10月に開始した最新の流行にかけて、分離株数が示す流行の規模は漸減した。その傾向は特に県北定点において顕著であり、一方、本荘・由利定点においては年次ごとの流行規模に顕著な減少傾向はみられなかった。

図2に県北定点、図3に本荘・由利定点において分離された溶連菌のT型の年次推移を示した。県北定点では1998年の主流行菌型であったT12の分離頻度が2000年にかけて顕著に減少した。これに対して、 T4の分離頻度が1998〜2000年にかけて増加し、2000年には分離株の50%以上を占め、主流行菌型となるに至った。また、 TB3264とT1の分離頻度もやや増加する傾向がみられた。一方、本荘・由利定点では1999年に分離頻度が最も高かったT1、およびT4、 T12とほぼ同頻度で分離されていたT6が2000年にはほとんど分離されなくなり、これらに替わってT4とT12 の分離頻度が顕著に増加した。また、T2の分離頻度も増加する傾向がみられた。

以上のように、溶連菌の流行規模は同一県内であっても地域ごとに異なる傾向にあることが明らかになった。また、主流行菌型、およびその年次推移が地域ごとに異なることも明らかになった。現在、県内のさらに異なる地域の定点病院で分離された溶連菌を収集してT型別を実施しており、今後、県内における溶連菌の流行状況に関するより詳細なデータが得られると考えられる。

秋田県衛生科学研究所
八柳 潤 齊藤志保子 伊藤 功

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る