インドネシアにおける志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae 1)の増加
(Vol. 22 p 83-83)

発展途上国では1990年代に入ってからは、赤痢を発症させる赤痢菌の菌種としてはShigella flexneriS. sonnei が主であった。しかし、インドネシアにおける1998〜1999年の調査によると、分離された赤痢菌のうち、約8%がS. dysenteriae 1であったと報告されている(1)。インドネシアにおいては、約15年前にS. dysenteriae 1による流行が見られたが、その再来であることへの警戒がなされている。また、この1月のマニラにおける日米医学新興再興感染症会議の席上で、インドにおいてもS. dysenteriae 1の分離数が増加してきていることが報告された。

わが国の赤痢患者の7割近くが国外感染で、感染地の3割以上がインドおよびインドネシアであることを考慮すると、S. dysenteriae 1による感染事例が今後、臨床の場で見られる可能性が高い。S. dysenteriae 1の感染力は他の菌種よりも強いと言われており、志賀毒素等の病原性因子の作用により重篤化することもある。赤痢様症状を示す患者を診た場合には、S. dysenteriae 1の感染である可能性も考慮する必要がある。

参考文献
(1) Emerg. Infect. Dis. 7:137-140, 2001

国立感染症研究所細菌部 渡辺治雄

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