Shigella flexneri variant Y の検出例−徳島県
(Vol.22 p 84-84)

2000(平成12)年11月24日徳島県西部の山間部にある保育所の調理従事者定期検便で2名からShigella flexneri が検出され、当所に同定および血清型別が依頼された。生化学的および血清型別検査を行い、S. flexneri variant Yであることが判明した。invE およびipaH のプライマーを用いてPCRを実施したが陰性であった。同菌の検出された従事者2名(52歳と21歳の女性)はそれぞれ10月4日と18日の検便では陰性であり、それ以降に感染したと考えられるが、下痢・腹痛等の症状はなく、無症状保菌者であった。保育所は園児11名(3歳以上)、職員4名で、保育園児については、10月末〜11月17日の間にかぜ、のどの痛みなどの理由で1〜3名の欠席があったが、下痢等による欠席者はなく、その後27日まで欠席者はいなかった。27日に実施した保育所職員および保菌者家族の検便で、21歳女性の家族(18歳男性)からも同菌が検出された。18歳の男性は11月5日〜7日まで頻回の下痢があり、その後12日まで下痢が続いたとのことだが、日頃から下痢気味であり、医療機関には受診していなかった。このため、下痢と赤痢菌との関係は明らかではない。両家族には海外渡航歴もなく、お互いによく行き来し、食事をともにすることが多かったとのことであるが、喫食調査では原因食の推定はできなかった。ともに飲用水に谷水を使用していたことから谷水の赤痢菌・大腸菌検索を実施したが、すべて陰性であった。3名に就業制限が出されたが、抗生物質の投与を受け赤痢菌の消失を待って解除された。

本県では赤痢菌の検出は年間1例程度であり、ほとんどが海外渡航者からの検出である。今回のように海外渡航歴もない無症状の保菌者から定期の検便で赤痢菌が検出されたのは初めてのことであり、本県においても感染症対策が困難な時代に入ったことを象徴するような事例であった。

徳島県保健環境センター・微生物科 清水俊夫

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