小学校で発生したノーウォーク様ウイルスによる感染性胃腸炎−神奈川県
(Vol.22 p 62-62)

神奈川県内の小学校において、嘔吐を主症状とする感染性胃腸炎の集団発生が2事例確認された。

最初の事例は、2000(平成12)年11月6日にA小学校において発生し、75名の集団欠席があった。欠席者は2年生が 135名中43名(32%)で最も多かった。発生が11月であったことからインフルエンザ等の流行性疾患、さらに嘔吐症状を示した児童が欠席者に多かったことから嘔吐下痢を起こすウイルスの検出を行った。咽頭うがい液7検体についてRD-18S、 HeLa、 Vero、 HEp-2、 GMK、 MDCK、 CaCo-2細胞を用いてウイルス分離を行ったがウイルスは分離されなかった。糞便5検体についてRT-PCR法とハイブリダイゼーション法でウイルス検出を行ったところ、5検体すべてからノーウォーク様ウイルス(NLV)が検出され、遺伝子型(genogroup)はII(GII)であった。電子顕微鏡(電顕)ではウイルスは検出されなかった。この学校では11月3日〜5日にかけて子ども会の行事が校庭で行われており、この行事に参加した児童を介してNLVの感染が広がった可能性が考えられた。

次の事例は、翌週11月15日にB小学校において発生し、2年生2クラスと4年生2クラスの児童 134名中51名(38%)の児童が嘔吐下痢症状を示した。そのため患者糞便21検体について遺伝子検出法でNLVの検出を行ったところ、14名(67%)にNLVが検出され、遺伝子型はGIIであった。電顕ではウイルスは検出されなかった。集団欠席のあった4つのクラスの児童は同一のトイレと水飲み場を使用しており、教室が廊下を挟んでそのトイレの前に位置していた。さらに患者発生当時この廊下の掃除当番であった児童の発症率が有意に高いことから、トイレやその周辺の廊下等の汚染によりNLVの感染が広がった可能性が考えられた。

この時期、A小学校のある秦野保健所管内では、このような嘔吐を主症状とする感染性胃腸炎が急激に増加しており、集団生活の場である学校等では、感染性胃腸炎の集団発生が起こりやすい状況にあった。なおこれらの学校では2日間の学級閉鎖により、感染の拡大を早期に終息することができた。このように感染性胃腸炎が疑われる集団発生の場合、すみやかに原因ウイルスの検査を行い、適切な対策をとることが重要であると考えられた。

今回、検査にご協力いただきました県衛生部、秦野保健所、大和保健所の方々に深謝いたします。

神奈川県衛生研究所ウイルス部
原みゆき 古屋由美子 片山 丘 渡邉寿美 斎藤隆行 今井光信

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