寿司店を感染源とした赤痢の集団発生事例−愛媛県
(Vol.22 p 35-35)

愛媛県の専門学校の生徒7名が2000(平成12)年10月16日夜半〜17日未明にかけて発熱、下痢、腹痛、全身倦怠感を訴え、10月17日医療機関を受診(3名が入院)した。患者全員が市内の寿司店で寿司を食べていたことより食中毒の疑いが高いと判断し、診察した医師から15時40分に保健所に通報があった。保健所は食中毒と推察し、発症した学生4名(入院患者を除く)と寿司店従業員2名の喫食状況等の調査や検便を行うとともに寿司店の調査を実施した。10月18日保健所は食中毒(疑い)が発生したことを公表し、10月19日に学生、従業員の計6名から赤痢菌(Shigella sonnei )が分離されたので、同店を起因とした集団食中毒と断定し、同店を営業停止とした。

患者の発症状況等から暴露日は14日〜19日(16日休業)の5日間と推測したが、報道機関を通じた一般住民への情報提供を行うとともに保健所に相談窓口を開設し、10月1日以降の同店での喫食者の把握と検便および二次感染防止対策を講じた。その結果、13日までの喫食者からは食中毒患者は認められず、14日〜19日の5日間に寿司店で寿司を食べた人数は 205名(相談窓口で把握した数)で、すべての情報源から判明した食中毒患者数は 103名であった。一方、感染症法に基づく赤痢患者等の届け出は10月19日〜10月28日までに61名あり、その内訳は県内43名、県外18名(愛知県1、大阪府1、兵庫県3、島根県4、岡山県2、広島県5、高知県1、大分県1の1府7県)であった。この61名の内訳は、赤痢患者37名(うち1名は二次感染者)、疑似症患者17名(うち5名は二次感染者。4名については診断後に菌検出)、無症状病原体保菌者7名であった。

衛生環境研究所において、愛媛県、島根県、岡山県、広島県、広島市、高知県で分離された菌株を収集し、12種類の抗菌剤(ABPC、 TC、 CP、 SM、 KM、 GM、 CTX、 CPFX、 FOM、 TMP 、ST、 NA)に対する耐性パターンを観察したところ、いずれの菌株とも同じパターン(SM、 TC、 TMP、 STの4剤耐性)を示し、制限酵素XbaIを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動型別においても同一パターンであった。

今回の赤痢菌(S. sonnei )による集団食中毒事例は、患者等の発生状況、喫食調査、細菌学的検査の結果から、赤痢菌に感染した寿司店従業員の握った寿司を喫食することにより発生拡大したことが判明したが、従業員への感染経路については特定することができなかった。

愛媛県立衛生環境研究所 田中 博  芝 美和 大瀬戸光明
愛媛県今治中央保健所  土井光徳

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