2000年の手足口病患者からのCA16、EV71、CA10、E25の分離−山形県
(Vol.21 p 274-274)

山形県では、5年ぶりに手足口病が大流行した(図1)。流行初期の状況については、すでに報告(本月報Vol.21、No.7参照)しており、今回は今シーズンの県内における分離状況をまとめて報告する。検体(咽頭ぬぐい液)は第19週〜第44週まで4地区11施設から合計117例が集まった。うち107件が5歳以下で、1例が40代の症例であり、この成人例は典型的な臨床症状を示したものであった。

ウイルス分離は、HEF、 HEp-2、 Vero、 MDCK、 GMK、 RD-18S細胞を用い、マイクロプレート法により行った。ウイルスの同定は、GMKもしくはRD-18S(一部HEF)細胞を用い、96穴のマイクロプレートによる中和試験により行った。抗血清は、コクサッキーウイルスA16 型(CA16)とエンテロウイルス71型(EV71)については、国立仙台病院ウイルスセンター、エコーウイルス25型(E25)はデンカ生研製のものを、コクサッキーウイルスA10 型(CA10)は感染研から分与されたものをそれぞれ使用した。

分離成績は、CA16が75株、EV71が16株、E25とCA10が各1株(分離率80%)であった。CA16とEV71はGMKを中心にHEFとVero細胞で、E25はRD-18SとHEF細胞、CA10はRD-18S細胞で分離された。成人例からはEV71が分離された。このように、山形では約8割がCA16であったが、全国的にはEV71の分離が多かった。

地域性を見ると、村山・最上・庄内の3地区と置賜地区で分離ウイルスが異なる傾向にあった(図2)。村山・最上・庄内地区ではCA16が主体で(一部村山・最上地区ではEV71)あったが、置賜地区ではEV71のみが分離された。ただし、置賜の検体は23〜24週のものに限られていたため、CA16が流行していなかったかは不明である。

手足口病の病原体は、一般に、CA16、EV71が主体であるが、臨床的には病原ウイルスの推定は不可能である。実際、山形県内で今シーズン4種類のウイルスが分離されており、正しい病原体診断のためにはウイルスの検出が不可欠である。

なお、山形県内のウイルス分離状況については本年9月からホームページ(http://www.eiken.yamagata.yamagata.jp/)への掲載を開始した。

山形県衛生研究所
後藤裕子 村田敏夫 水田克巳 村山尚子 溝口二郎 菅野頴一 早坂晃一

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