病院給食が原因となったSalmonella Nagoyaによる集団食中毒事例−静岡県
(Vol.21 p 243-244)

2000年6月28日、静岡県中部のA病院から、前日より入院患者の中に食中毒様の症状を呈するものが多数認められる旨の届出が保健所にあり、調査を開始した。患者はA病院の入院患者95名と医師1名であり、発病日は6月27日〜7月1日の5日間に及んでいるが、そのうち83名(87%)は6月27日12時〜6月28日20時の間に集中していた。症状は下痢(90%)、発熱(83%)、腹痛(58%)等が主なものであった。大半の患者は、発症前数日間は病院の給食しか喫食しておらず、給食に絞り喫食状況を統計学的に分析したところ、6月26日の夕食が原因食品であることが推定された。なお、発症率は24%(96/394名)であり、平均潜伏時間は37.8時間であった。

原因菌の検索は、患者便96検体、給食従事者便48検体、保存食・原材料133検体(6月24日〜6月27日分)および給食施設ふきとり29検体の計306検体について行われ、患者便89検体および保存食(6月26日夕食のマヨネーズ和え)1検体からSalmonella Nagoya [O8:b:1,5]が分離された。マヨネーズ和えの原材料(キュウリ、玉ねぎ、竹輪、マヨネーズ)は保存されていなかったので、本品の原材料が汚染されていたか否かは確認できなかったが、竹輪の前処理(ボイル)以外は加熱工程がないので、調理室内での二次汚染の可能性も充分考えられた。

分離されたS. Nagoya 90株について、XbaIにより切断したDNAパターンをパルスフィールド・ゲル電気泳動で比較したところ、すべて同一であった。さらに、患者由来株4株とマヨネーズ和え由来株1株については、BlnIも用いたが、すべて同一パターンを示した。また、分離株90株について、センシディスクを用いて薬剤感受性試験を実施したが、全株とも、使用したすべての抗菌剤(ABPC、 SM、 TC、 CPFX、 KM、 CTX、 CP、 ST、 TMP、 GM、 NA、 FOM)に対し感受性であった。

今回の原因菌となったS. Nagoyaの汚染源を追及するために、マヨネーズ和えの食材である竹輪とマヨネーズ、ならびに同時期に他のメニューの調理に使用した鶏卵について遡り調査を実施したが、異常は認められず、感染源を特定できなかった。S. Nagoyaは全国的にもあまり分離されることのない血清型である。本菌の汚染経路や自然界における生態については、まだ不明な点が多く、継続的調査が望まれる。

静岡県環境衛生科学研究所
川森文彦 増田高志 有田世乃 秋山眞人

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