最近経験したサイクロスポーラ症の1症例−沖縄県
(Vol.21 p 194-195)

サイクロスポーラ症はサイクロスポーラ(Cyclospora cayetanensis)による腸管寄生虫感染症である。わが国では本症の報告例は少なく、把握できる限りでは6例程度であり、情報不足と思われるためここに報告する。

症例は28歳の沖縄在住のアメリカ人男性で、2000(平成12)年5月14日〜21日まで中国に旅行し、5月28日より1日10数回の下痢、腹痛、嘔気が出現した。5月29日、症状改善しないため当院受診となった。患者は同性愛歴もなくHIV抗体は陰性であった。下痢の性状は茶褐色水様でほぼ無臭であり、血液の混入は認めなかった。腹痛は持続性で臍周囲に認め、テネスムスはなかった。来院時、発熱はなく、腹部圧痛も認めず、腸音が亢進している以外は特に異常所見は認めなかった。

当日は便の細菌検査、虫卵検査の検体を提出し、補液を行い、レボフロキサシン1日300mgを5日間処方し帰宅とした。その後虫卵検査でサイクロスポーラとブラストシスティスが検出された。6月5日再診時も下痢、腹痛は変化なく持続していた。再診時の血液検査所見では白血球の増多はなく、CRPも陰性で、異常はみられなかった。同日よりサイクロスポーラ症に対しST合剤(スルファメトキサゾール400mg、トリメトプリム80mg)を1日4錠、ブラストシスティスに対しメトロニダゾール1日750mgの処方を開始した。開始後1週間後には便性状は軟便になり、腹痛は軽快した。しかし、その時点でも便よりサイクロスポーラ、ブラストシスティスは持続検出された。その後患者は来院しなくなったため詳細は不明である。

サイクロスポーラは世界に広く分布するが、糞口感染のため、途上国に多く見られる。現在までわが国ではサイクロスポーラ症の報告は少ないが、今後はAIDSなどの免疫不全患者の増加、海外旅行者の増加などに伴い増加することが予想される。しかし、衛生環境が整備されているわが国では、下痢症をみた場合でも原虫を含む寄生虫検査は軽視されており、重篤な状態に至って初めて診断される場合が多い。免疫不全患者における頑固な下痢や旅行者下痢症をみた場合にはサイクロスポーラを含む寄生虫疾患も念頭におき検査をすすめる必要がある。

琉球大学医学部第一内科 平田哲生 座覇 修 金城福則 斎藤 厚
琉球大学医学部寄生虫学教室 當真 弘 佐藤良也
琉球大学医学部附属病院検査部 中村 広
大阪市立大学医学部医動物学研究室 井関基弘

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