24時間風呂での水中分娩後発症した新生児レジオネラ肺炎の1例
(Vol.21 p 190-191)

新生児レジオネラ肺炎の報告は本邦においてはこれまで5例あるが、いずれも院内感染例と考えられる。本症例は24時間風呂での水中分娩により新生児がレジオネラ肺炎を発症した最初の報告である。

患児は1999年6月15日出生、第2子で、在胎週数42週、出生体重3,500gの女児である。母体の妊娠経過に特記すべきことはなく、妊娠中より母親は自宅での水中分娩を希望していた。出産時の助産婦立ち会いはなく、自宅の24時間風呂にて水中分娩した。生後15分に助産婦が自宅に到着し、その時点では児に特に問題はなかった。

日齢4に黄疸、発熱を認め、近医に光線療法のため入院となったが、翌日軽快し、退院した。日齢7に発熱が認められ、夜間に嘔吐がみられたが、翌、日齢8には解熱しており、活気は普段と変わりがなかった。同日14時30分呼吸停止の状態に気付き、119番通報した。救急隊到着時、心肺停止状態で、当院救急外来に搬送となった。蘇生行為が行われるも反応せず、死亡が確認された。

家族の了承を得て病理解剖を行ったところ、両側肺に小豆大の結節がびまん性に認められた。結節内では肺胞腔内に好中球の浸潤と組織球の集簇を認めた。組織球内にはグラム染色難染性、ヒメネス染色陽性の桿菌を多数認めた。病変部肺組織より、PCR法でLegionella pneumophila DNAが検出され、間接蛍光抗体法でL. pneumophila血清群(SG)6抗原陽性の桿菌が多数認められた。以上により、患児はL. pneumophila SG6による肺炎で死亡したと判断された。

出産時に使用された24時間風呂の浴槽水は出産後に入れ替えをしており、浴槽水のサンプルは出産2週間後に採取されたもので、浴槽水中のレジオネラ属菌の菌数は14,640CFU/100mlであった。菌種については同定できなかった。

24時間風呂は生物浄化を導入しているので、風呂水からは相当数の細菌が検出されることが多い。24時間風呂での水中分娩にはレジオネラ感染症に限らず、細菌感染症を引き起こす危険性がある。

名古屋第二赤十字病院小児科 永井琢人 側島久典 岩佐充二
名古屋第二赤十字病院病理 都築豊徳
国立感染症研究所細菌部 倉 文明 前川純子 渡辺治雄

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