The Topic of This Month Vol.21No.7(No.245)


HIV/AIDS 1999年12月31日現在
(Vol.21 p 136-137)

エイズ発生動向調査は1984年に開始され、1989年〜1999年3月31日までは「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」に基づいて実施されてきた(凝固因子製剤による感染例を除く)。1999年4月1日からは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づく感染症発生動向調査の対象疾病の1つ(4類感染症)として行われている。HIV感染者またはAIDS患者を診断した医師は、「後天性免疫不全症候群発生届(HIV感染症を含む)」を7日以内に最寄りの保健所に提出することが義務づけられており、保健所はオンラインを通して、都道府県等(都道府県、保健所を設置する市および特別区)および中央感染症情報センター(国立感染症研究所感染症情報センター内に設置)に報告する。報告内容は、性、年齢、HIV感染者・AIDS患者の別、診断方法、発病年月日、診断年月日、AIDS診断指標疾患、居住地、推定される感染地、感染経路などである。本特集はエイズ動向委員会によって2000年4月21日に確定された1999年エイズ発生動向年報集計に基づく。

 1.1999年のHIV/AIDS発生状況

1999年に新たに報告されたHIV感染者(AIDS未発症者、以下HIVと省略)は530人、 AIDS患者(以下AIDSと省略)は300人であった。感染経路別では、性的接触による感染例が最も多く、HIV報告の77%、AIDS報告の73%を占めた。国籍・性別では、日本国籍男性がHIVの72%、 AIDSの71%と多数を占めた(図1)。男女比はHIVが約4:1、 AIDSが約6:1だった。感染地別では、日本国籍例の大半が国内感染(HIV 79%、 AIDS 69%)である(図2)。報告地別では、東京・その他の関東・甲信越ブロックが最も多く(HIV 76%、 AIDS 71%)、次いで近畿ブロックが多かった(HIV、 AIDSともに11%)。

 2.1998年報告との比較

1999年のHIV報告は前年より108人増加し(約26%増)、発生動向調査開始以来最高の年間報告数を記録した。1998年同様、日本国籍男性の国内感染が多く、同性間および異性間の性的接触による感染が増加した。また報告地別では、特に東京と九州ブロックの増加が目立った。AIDS報告は前年より69人増加し(約30%増)、日本国籍・外国国籍ともに異性間の性的接触で増加した。なお、上述した1999年4月1日の発生動向調査の変更に伴い、その前後で一時的に報告が増加した可能性があり、比較に際しては留意が必要である。

 3.1985年〜1999年12月31日までの累積報告数と発生動向

1999年12月31日までの累積報告数は、HIV 3,443、AIDS 1,586であった。本発生動向調査とは別に、厚生省研究班の全国調査によって、凝固因子製剤によるHIV 1,434、AIDS 631が確認されている(1997年10月末時点)。以下、凝固因子製剤による感染例を除いた発生動向を要約する。

 1)HIVの年間報告数は1992年のピーク後減少したが、1995年以降一貫して増加傾向にある(図3a)。HIVの増加は日本国籍男性の国内感染例の増加によるものであり、日本国籍女性も緩やかな増加傾向にある。外国国籍男性・女性では過去6年間、横這いないし減少の傾向にある。外国国籍例の割合は1999年では約20%であり、過去6年間漸減傾向にある。

累積報告例について感染経路別にみると、性的接触による感染が最も多く(異性間47%、同性間26%)、静注薬物濫用、母子感染によるものはいずれも0.6%と低かった(図4)。日本国籍例では、異性間および同性間の性的接触と感染経路不明が増加を続けているのに対し、外国国籍例ではいずれの感染経路も減少ないし横這いである(図5)。1999年には、日本国籍例で同性間性的接触が急増し、異性間性的接触を上回った。感染経路不明例は例年外国国籍例の約40%前後を占めているが、日本国籍例においても例年15%前後で推移している。

年齢分布は、国籍にかかわらず男性では25〜34歳、女性20〜29歳にピークが見られる。感染地別では日本国籍男性の国内感染と感染地不明例が増加を続け、外国国籍男性の日本国内での感染が増加傾向にあることが注目される。外国国籍例を世界地域区分別にみると、東南アジアから来日した者が最も多く、次いでラテンアメリカ、サハラ以南アフリカが多い。

 2)AIDSの年間報告数は1997年まで増加を続け、1998年に初めて減少に転じたが、1999年には再び増加している(図3b)。AIDSは日本国籍男性において増加が著しく、他の国籍・性別区分ではいずれも微増傾向であった。外国国籍例の割合は1999年には約25%であり、過去6年間では25〜30%でほぼ一定している。

感染経路別にみると、HIV感染と同様に性的接触が最も多く(異性間46%、同性間23%)、静注薬物濫用、母子感染によるものは0.9%、 0.8%と低かった。日本国籍例では異性間の性的接触による報告が増加し、同性間の性的接触および感染経路不明は過去6年間で増減を繰り返している。感染経路不明の割合は外国国籍の45%以上、日本国籍の25%以上である。

年齢分布は日本国籍男性では40〜49歳にピークがあるが、日本国籍女性および外国国籍男女では25〜34歳にピークがみられる。感染地別では日本国籍男性の国内感染例が増加している。

日本国籍と外国国籍のAIDSの累積報告数(1,149と437)を分母として、AIDSの指標疾患の分布をみると、両群とも類似の分布を示し、ニューモシスチス・カリニ肺炎がそれぞれ46%、40%と最多で、カンジダ症(21%、14%)、HIV消耗性症候群(12%、13%)がそれに次いだ。両群では活動性結核に差が認められ、日本国籍では7.0%であるのに対し、外国国籍では14%とほぼ2倍であった。

 3)献血者のHIV抗体陽性率は年々増加を続け、1999年には過去最高値の献血10万件当り1.02となった(図6、および本月報Vol.21, No.6, p.125参照)。一方、1999年の保健所におけるHIV抗体検査および相談の総実施件数は、それぞれ48,218件(1998年は53,218件)、103,206件(同111,046件)であり、前年に比べ大きく減少した。利便性の高い場所と時間帯を配慮した検査・相談の実施や、より積極的なエイズ予防に関する普及啓発活動が望まれる。

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