A群ロタウイルスによる集団下痢症−千葉県
(Vol.21 p 145-145)

A群ロタウイルスは、冬季乳幼児下痢症の主要な病因ウイルスであるが、年長児や成人にも感染がみられる。これらの感染のほとんどが散発であるが、稀に小学校や老人ホームでの集団発生が報告されている。2000年3月中旬、千葉県内の小学校でA群ロタウイルスによる集団下痢症の発生が見られたので概要を報告する。

 概要:3月13日(月)、県内のA町B小学校から保健所に、下痢、吐気を主症状とする集団発生の届出がされ、感染症と食中毒の両面から調査が進められた。患者は全学年にみられたが、特に2学年、3学年の発生が多かった。全校では 214名中 103名に発症者がみられた(発症率48%)。患者の発生は3月10日〜13日にみられ、3月11、12日の2日間に7割近くが発症した(図1)。主な症状は下痢(42%)、吐気(67%)、発熱(65%)、嘔吐(50%)、腹痛(51%)であった。B小学校の給食は自校式であり、同じ給食施設で調理した給食を隣接の保育園と近隣の中学校に提供していたが、患者の発生は保育園で若干みられたものの中学校では全くみられなかった。

 検査結果:患者10名の便材料について、電顕検索を行ったところ、すべての検体からロタウイルスを検出、A群ロタウイルス検出用ELISAもすべて陽性であった。また、PCRによる血清型別では2型であった。これらの患者のうちペア血清の得られた9名についてA群ロタウイルス補体結合反応を行ったところ、8名に明らかな抗体上昇が認められた。さらに、給食従事者6名の便材料についてA群ロタウイルス検出用ELISAを、3月8日〜10日の小学校給食の検食(3月8日:チンジャオロース・納豆和え、3月9日:鶏のから揚げ・ツナサラダ・フルーツカクテル、3月10日:鯖の塩焼き・ゴマ和え・みそ汁)についてA群ロタウイルスPCRを行ったがいずれも陰性であった。

なお、患者便、給食従事者便、検食の細菌検査から食中毒病原細菌は検出されなかった。

以上の結果から、今回の集団発生はA群ロタウイルスによるものであることが明らかになった。また、患者発生状況から何らかの一斉暴露を受けたと思われるが、給食従事者便および保存されていた検食のウイルス検査は陰性であり、また同じ給食を食している保育園、中学校ではほとんど患者がみられないことから感染経路は明らかにできなかった。県内の感染症発生動向調査の定点からの検体では、A群ロタウイルス陽性は例年より遅く2月中旬に始まり、3月までに23検体みられ、本集団下痢症発生時に県内での流行が認められていた。

千葉県衛生研究所
篠崎邦子 岡田峰幸 海保郁男 安房保健所 福原 誠

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る