調理用ミキサーを介したSalmonella Enteritidisによる集団食中毒事例−愛媛県
(Vol.21 p 118-119)

1999年11月11日、愛媛県土居町内の医療機関から、嘔吐・下痢等の食中毒症状を呈した20数名を診察した旨の連絡が伊予三島保健所にあった。同保健所で調査したところ、同町内の2幼稚園、5小学校、1中学校の園児、児童、生徒および教職員など2,153名中904名が発症(発症率42%)、311名が医療機関を受診し、15名が入院していることがわかった。さらに、すべての患者は、D学校給食センターで調理された給食を食べていることも判明した。疫学調査の結果、患者の発症日時は11月6日〜13日までの8日間で、比較的長期であった。また、患者の臨床症状はに示したとおりであった。

西条中央保健所で実施した食品、ふきとり材料、患者便等の細菌検査の結果、患者便164件中103件からSalmonella Enteritidisが分離された。さらに、11月5日の給食である「ごまあえ」および、「ごまあえ」の調理時にゴマと醤油の混和に使用した調理用ミキサーの羽根の付け根部分のふきとり材料からもS. Enteritidisが分離された。いずれの分離株ともファージ型は1型であった(感染研で型別)。

S. Enteritidisが分離された調理用ミキサーは、使用後洗浄消毒されるが、羽根を取り外しての分解掃除は行われていなかった。事件後の調査で初めて羽根を取り外したところ、羽根の重なり合った部分には食物残渣が確認された。また、このミキサーは卵の攪拌に用いられることが多く、11月5日以前にも11月1日と2日に卵の攪拌に使用されていた。そのため、「ごまあえ」調理時には既にサルモネラに汚染されていたと考えられた。さらに、11月8日の給食である「ちぐさやき」(卵、人参、ほうれん草、鶏肉ミンチを混ぜ合わせ、自動焼き物機で焼いたもの)の調理にも、このミキサーが使用されていた(11月9日、10日には使用されていない)。この「ちぐさやき」は、調理工程の記録から加熱が不十分であったことが確認されており、患者の発生が長期間であったことから推察して、「ちぐさやき」もミキサーを介してサルモネラに汚染された結果、食中毒の原因食品になったと判断した。なお、ミキサーが汚染されていたにもかかわらず、11月5日になるまで食中毒の発生が見られなかったのは、多くの場合、ミキサー使用後に食品の加熱工程があり、この工程で細菌が死滅したためと推察した。

以上のような疫学調査および細菌学的検査から、調理用ミキサーの洗浄不足によるサルモネラ汚染が今回の食中毒の発生につながったと結論付けた。

愛媛県伊予三島保健所  薦田洋司 稲荷公一
愛媛県西条中央保健所  北川之大 今城巧次
愛媛県立衛生環境研究所 田中 博 大瀬戸光明

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