The Topic of This Month Vol.21No.5(No.243)


腸管出血性大腸菌感染症 2000年3月現在
(Vol.21 p 92-93)

腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli :EHEC、あるいはVero毒素産生性大腸菌:VTEC、 志賀毒素産生性大腸菌:STECとも呼ばれている)による感染症は、わが国において1996年7月に7,000名を超える患者が報告された(本月報Vol.18, No.7参照)。同年8月に指定伝染病となり、その患者(保菌者を含む)の届け出が義務付けられた。さらに、1999年4月に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)」においては、3類感染症として位置づけられ、全臨床医に患者および無症状病原体保有者を届け出る義務が課せられている(診断基準はhttp://www1.mhlw.go.jp/topics/todokede/tp1018-1_11.html参照)。

表1に厚生省伝染病統計および感染症発生動向調査に基づいたEHEC感染症届出患者数を示す。患者数は、1997年1,941人、1998年2,077人、1999年は2,990人であった。新法施行後1999年4月〜12月までの都道府県別の患者2,882人(無症状病原体保有者1,086人を含む)の発生状況をみると、東北、近畿、中国地方の一部と九州地方にやや多い傾向があり、地域差がみられる(図1)。図2に同期間の患者の性別年齢分布を示す。有症者の比率は若年層で高く(19歳以下で75%)、成人層では約半数(20歳以上で55%)が無症状者であった。

一方、地方衛生研究所から感染症情報センターに報告されたEHEC検出数をみると、1991〜1995年までは毎年100前後であったが(本月報Vol.17、No.1参照)、1996年に3,021と激増して以来、1997年2,020、 1998年2,053、 1999年1,840で推移している(図3)。また、集団事例は、1996年には小学校を中心として多発したものの、1997年以降は小学校では発生しておらず、発生規模も小さくなってきている。これは学校給食における衛生管理の強化によるものと考えられるが、保育園等衛生指導、管理が十分に行き届きにくい施設においては依然として集団発生がおこっている(表2)。これらの集団事例の中で、鹿児島県の保育園では中華サラダ、富山県の飲食店ではイクラ、山口県の老人ホームではサラダ、長野県の事例では小規模水道水および配水池の水から原因菌が分離された。また、いわゆるdiffuse outbreak(散発例の広域多発)として、1997年3月に関東南部から東海地域にかけて発生したO157による事例(本月報Vol.19、No.6参照)や1998年5月に富山県、首都圏を含む7都府県で患者計49名が発生した事例等も報告された。これらの事例においては、分離菌株DNAの制限酵素(Xba I)切断後のパルスフィールド・ゲル電気泳動によって、それぞれの事例由来菌は同じ遺伝子型であることが示され、diffuse outbreakの発見に威力を発揮した。

検出されたEHECの血清型および毒素型を表3に示した(1991〜1996年は本月報Vol.19、 No.6参照)。最も多く検出される血清型であるO157:H7 の割合は、1991〜1995年は83%(436/525)、 1996年76%(2,307/3,021)、 1997年67%(1,347/2,020)、 1998年64%(1,320/2,053)、 1999年55%(1,003/1,840)と漸減傾向にある。一方、O157以外の血清型(non-O157)の分離頻度の年別推移をみると、1991〜1995年9.3%、 1996年11%、 1997年25%、 1998年25%、 1999年28%と漸増傾向がみられた。その中で検出頻度の高い血清型は、O26:H11、 O26:H-、 O111:H-などがある。これらの傾向は、1998年と1999年の集団発生事例の原因菌の血清型を反映していると考えられ(表2)、今後はnon-O157菌の動向についても詳細に把握する必要があろう(週別、地域別のEHEC検出状況の詳細および速報は感染症情報センターホームページhttp://idsc.nih.go.jp/prompt/vtec-j.html参照)。実際、1999年にはO86感染での溶血性尿毒症症候群(HUS)による死亡例も報告されている(本月報Vol.20、No.11参照)。患者から分離された菌はVT2陽性であったが、eaeA 陰性であり、enteroaggregative E. coli (EAEC)の遺伝子マーカーであるpCVD432プラスミドを保持していた。

O157:H7の毒素型をみると、1996年は87%がVT1とVT2の両毒素産生性であったが、1999年にはその頻度が57%まで減少した。一方、O157:H7でVT2単独産生性の菌は、1996年は13%であったが、1999年には41%まで増加した。その他の血清型では8割以上がVT1単独の傾向を示している。

2000年3月31日までに発生した患者の届け出数は202人である(表1、2000年4月21日現在)が、本年も夏場に向けて患者発生の増加が予測されるので、十分な警戒が必要である。

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