食品・患者から同型菌が分離された腸炎ビブリオ食中毒の2事例−埼玉県

1999(平成11)年に埼玉県で発生した腸炎ビブリオ食中毒のうち、患者と食品から同一性状の腸炎ビブリオが分離された事例が2件あったのでその概要を報告する。

事例1:1999年8月3日〜4日にかけて、W市の寿司店で寿司を喫食した20グループ60名のうち、48名が腹痛、嘔吐、下痢等の食中毒様症状を呈した。患者便1検体および調理従事者6名中4名の便検体から腸炎ビブリオ血清型O1:K25が分離された。また、病院で実施した患者検便16検体中9検体から腸炎ビブリオが検出された(血清型は不明)。8月4日に採取された食品検体からは、20検体中タコとイワシから腸炎ビブリオが分離され、その血清型はタコ由来株がO1:K25でイワシ由来株がO4:K12であった。当所で分離されたO1:K25株はすべてtdh 陽性、ウレアーゼ陰性であった()。さらに患者、従事者およびタコ由来株の薬剤感受性試験(CP、SM、TC、KM、ABPC、NA、ST、FOM、NFLX、OFLX、CPFXの11薬剤)とパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)の解析結果は一致した(;事例1)。しかし、本事例ではタコを喫食していない複数の患者がいたこと等から、タコが原因食品であるとは特定できなかった。また、従事者から起因菌が高率に分離されたことが特徴的であった。

事例2:9月16日にW市の事業所食堂で「鮪納豆丼」を喫食した43名のうちの20名が食中毒様症状を呈した。患者便3検体から腸炎ビブリオ血清型O3:K6 が分離されたほか、保存検食のマグロから腸炎ビブリオが分離された。マグロ由来株の血清型はO3:K6、O2:KUTおよびO4:KUTであった。分離されたO3:K6株はすべてtdh 陽性、ウレアーゼ陰性であった()。さらに患者およびマグロ由来株の薬剤感受性試験とPFGEの解析結果は一致した(;事例2)。本事例は、保存検食のマグロから同型菌が分離されたこと等から、腸炎ビブリオに汚染された食材が原因であった可能性が示唆された。

なお、供試した食品は、10倍量の食塩ポリミキシンブイヨンで増菌培養後、TCBS寒天に塗抹し、疑わしい集落を5〜10個釣菌し、同定した。

埼玉県衛生研究所
斎藤章暢 正木宏幸 大塚佳代子 小野一晃 濱田佳子 倉園貴至
埼玉県朝霞保健所 田口隆弘

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