小学校で発生した小型球形ウイルスによる嘔吐下痢症−神奈川県

1999(平成11)年12月2日、県内のS小学校において、全校児童567名中146名の欠席があり、そのうち104名は嘔吐を呈していた。そこでインフルエンザ等の流行性疾患を疑い、咽頭うがい液、血液、糞便の採取が行われた。咽頭うがい液は、RD-18S、 HeLa、 Vero、 HEp-2、 MDCK、 CaCo-2細胞を用いてウイルス分離を行ったがウイルスは分離されなかった。またこの材料からエンテロウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスのPCRを行ったがすべて陰性であった。採取できた2検体の糞便を用いて電子顕微鏡(EM)で検査したところ、この糞便からEMでSRSV粒子が検出された。さらにプライマーに35'/36、 NV81/82/SM82を用いてPCRを行ったところ、 1st PCRにおいて、両方のプライマーで目的の位置に遺伝子の増幅が認められた。そこで国立公衆衛生院より配布されたプローブを用いてプレートハイブリダイゼーションを行った結果、ノーウォーク様ウイルス(NLV)genogroup II(GII)であった。今回の感染症はインフルエンザを疑っていたため採血が行われ、21検体のペア血清が得られた。このペア血清でNLV(リコンビナント抗原)に対する抗体をELISAで測定したところ、 GII抗原(r47、 r76、 r104、 r7K)に対して21検体中18検体に抗体の有意上昇が確認された。またインフルエンザの抗体検査では21名中2名のみA(H1)型に有意上昇を示した。このことから今回の集団発生事例はNLVによる感染症であることが判明した。

NLVのリコンビナント抗原を分与いただきました感染研の名取克郎先生、資料等を提供下さいました県衛生部保健予防課および生活衛生課、検体等の採取に協力下さいました小田原保健所保健予防課および食品衛生課の方々に深謝いたします。

神奈川県衛生研究所ウイルス部
原みゆき 古屋由美子 片山 丘 渡辺寿美 斎藤隆行 今井光信

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