アデノウイルス7型分離状況と7h型分離の一例−広島市

広島市におけるアデノウイルス7型は、1994年以前には全く検出されず、1995年5月に急性気管支炎および中耳炎と臨床診断された1歳女児からの分離が最初で、1998年6月までの約3年間に127人から分離された。広島市でのピークは1995年7月で、1995〜96年が第一波、その後は減少し、1997〜98年が規模の小さい第二波の形で流行した。しかし、1998年7月以降は1999年7月まで全く検出されず、代わって、この期間には3型の分離が際立って多かった。最近では1999年8月、10月、11月に各々1人から分離された()。

7型分離例の臨床診断名は約78%が呼吸器系疾患で、広島市ではこれらの疾患を中心に7型感染がみられた(表1)。なお、初発例を含め7型の70%は厚生省の旧感染症発生動向調査事業の検査対象外疾患からの分離であったことから、アデノウイルスに限らず、多彩な疾患を引き起こす病原ウイルスの監視には、幅広い疾患を対象とした検査が必要と思われる。7型分離陽性患者の年齢は1歳が27人と最も多く、次いで2歳と3歳が各19人で、3歳以下が約55%を、性別では男性75人、女性51人で、約6割を男性が占めていた。

WadellらのBam HIの切断パターンに基づく分類法に従えば、7型にはこれまで少なくとも14の遺伝子型が報告されている。さらに、橋戸らは第47回日本ウイルス学会において新たな遺伝子型の検出について報告している。

これまでの調査結果から、1987〜92年の国内分離株は中国に特有の7dタイプと同一で、1995年以降の分離株とはBst EIIでのみ異なる切断パターンを示すことが明らかにされている。なお、1995年以降の国内分離株はAzarらが7d2遺伝子型として報告したイスラエルの分離株と同じタイプと考えられていることから、遺伝子型は7d2と表記した。

1997〜99年に広島市で分離された7型について制限酵素切断パターン解析を行ったところ、大部分の株はこれまでの結果と一致する切断パターンを示したが、1997年分離の1株はBst EIIで7a、Pst Iで新たなパターンを、他の1株はBcl Iでd1のパターンを示し、1998年分離の1株はBst EIIで新たなパターンを示したことから、それぞれ7dの亜型として、検体採取の早い順に7dv1、7dv2、7dv3と示した(表2)。一方、1999年8月に1人から分離された3株は、Bam HIで愛知県および神奈川県で分離された7hタイプのパターンを示した。他の制限酵素ではBst EII、Hpa I、Sac Iが7aタイプ、Hin dIII、Sma I、Pvu II、Bgl II が7dタイプ、Pst I、Bgl I、Bcl Iが新たなパターンを示した。7hの分離された患者は27歳女性で、臨床診断名はインフルエンザ様疾患と不明熱、主な臨床症状は発熱(39.9℃)、咳、下痢、リンパ節腫張が記載されていた。d2感染に比べて症状がやや重い印象があり、今後の動向に注目する必要がある。なお、海外渡航歴については不明である。

広島市衛生研究所
池田義文 阿部勝彦 上村真由美 藤井彰人 山岡弘二 荻野武雄

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