脳症患児からのインフルエンザウイルスA(H3)型の分離−北海道

脳症と診断された小児から採取した咽頭ぬぐい液よりインフルエンザウイルスA(H3)型を分離したので概要を報告する。

患者は札幌市内に在住する5歳男児(幼稚園児)で、1歳5カ月より熱性けいれんを繰り返すという既往歴があるが、1998年6月よりバルプロ酸の投与を受け、それ以後発熱時のけいれんはなかった。発症は1999年11月29日で、朝は元気であったが幼稚園で昼食時に発熱に気付き、いったん帰宅して解熱剤(アセトアミノフェン)の座薬投与後、北海道社会保険中央病院小児科を受診した。同科外来待合室にて1〜2分の全身硬直性のけいれんを起こし、その後も傾眠傾向強いため人院したところ、再度1〜2分の全身硬直性のけいれんを起こした。その時点のCTにて脳浮腫の所見を認め、また入院時の咽頭ぬぐい液のDirectigen Flu Aによる迅速診断でA型インフルエンザ抗原陽性となったためインフルエンザ脳症が疑われた。直ちにアマンタジン、グリセオール、デカドロンを使用し様子をみた。翌30日、意識状態の改善を認めるものの傾眠傾向が強く、脳波で徐波化がみられたためさらにウリナスタチンを併用した。12月5日より意識もかなり清明となり、その後回復している。患者のインフルエンザ予防接種歴はなかった。

来院時の検査所見は、WBC 7,300/mm3、RBC 415万/mm3、Hb 11.5g/dl、Ht 35.1%、Plat 24.2万/mm3、CRP(−)、NH3 64μg/dl、GOT 19単位、GPT 9単位、LDH 377 U/l、CK 71 U/l、尿検査異常なし、咽頭培養α streptococcusのみ、髄液所見異常なしであった。

患者の入院時に採取した咽頭ぬぐい液をMDCK細胞およびCaCo-2細胞に接種したところ、MDCK細胞でウイルスが分離された。インフルエンザセンターから分与されたフェレット感染免疫血清を用いたHI試験の結果、A/Sydney/05/97(H3N2)抗血清に対するHI価は1:320であった。

北海道立衛生研究所 伊木繁雄 三好正浩
北海道社会保険中央病院小児科 立野佳子 澤田博行
市立札幌病院 富樫武弘

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る