兵庫県下2地域におけるSalmonella Braenderup流行

1999年9月〜11月に姫路市某小児科医院を受診した22名の下痢症患児(0〜8歳)糞便中6名から、Salmonella Braenderupが分離された(表1.区分A)。続いて、11月初旬に淡路島T町の2小児科医院を受診したT町とI町の下痢症患児4名(3〜11歳)の糞便からも民間検査機関でSalmonella O7が分離され、当所でS. Braenderupと同定した(表1.区分B)。さらに、県洲本保健所が11月初旬〜中旬にかけて検索を実施した、淡路島内1市2町の4施設(S市、N町、T町)の幼稚園および公立小学校給食調理者の定期検便69名(男女それぞれ6名および63名)のうち14名(採便日10月26日〜11月11日)からSalmonellaが分離され、当所の検索結果により9名がS. Braenderupの保菌者であることがわかった(表1.区分C)。なお、同時期に実施した1市2町8施設(S市、N町、M町)89名はSalmonella陰性であった。

以上のS. Braenderup分離19株について、Bln I(図1)およびXba I(Bln Iと同じ傾向につきデータを示さない)によるDNA切断産物のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を実施したところ、今回の県下S. Braenderup流行株には、姫路市と淡路島間に明らかな地域差が認められた。しかし、淡路島の患者・給食従事者株(淡路島株)は姫路市患児分離株1株とは同一のPFGEパターンを示した。なお、これらの菌株は、対照として用いた集団食中毒事例(1991年)株と散発事例(1993年)株いずれとも異なっていた。

淡路島給食従事者の定期検便は2週間ごとに実施されており、今回の分離前後に他の給食従事者からSalmonellaは分離されていないので一過性の事象ではある。淡路島の患児由来株4株が給食従事者由来株と同一の遺伝的性状を示したことは共通の喫食品が疑われるが、現在、我々はそれを明らかにしていない。

淡路島と姫路市は地理的に離れており、ヒト−ヒト間の積極的接触は考えられないものの、両地域間に何らかの共通原因(共通食品の喫食など)があると考えられる。しかし、両者の菌株には明らかに遺伝的差異が認められたので(図1)、今回の2地域流行が同一クロンから派生したと考えるのは早計である。しかし、姫路市の患児由来6株中1株が、淡路島株と同一であったことから、今回の県下流行が姫路市主要5株あるいは淡路島株のどちらかを親クロンとする2種類のサブクロンから派生したと考えることもできる。

兵庫県立衛生研究所 浜田耕吉 辻 英高
兵庫県洲本保健所  瀬合悦子 前田新造

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る