妊婦の風疹IgG抗体avidityの有用性

妊婦が妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると母子感染により胎児に障害(難聴、白内障、心臓奇形)を起こす可能性があるため、臨床の現場で胎児感染か否かの判断を求められる症例は風疹の目立った流行がない現在でも存在する。妊婦が風疹ウイルスに感染したかどうかの判断に血清中の風疹特異IgM抗体検出が有用であるが、感染後長期間風疹IgM抗体が検出される例が存在すること、胎児感染が稀な再感染においても風疹IgM抗体がある程度の確率で検出されること等、必ずしも初感染の証明にはならない。

一方現在は、RT-nested PCRによる風疹ウイルス遺伝子診断が可能になり、胎盤絨毛、羊水、臍帯血中の風疹ウイルス遺伝子を検出することにより胎児感染が起こったかどうか判断できるようになった。しかし検体を採取する際わずかではあるが流産の危険があることから、風疹IgM抗体以外の方法で血清学的にある程度症例をしぼりこめないかという要望は強い。

そこで我々は、胎児感染の可能性の高い初感染と可能性の低い再感染を鑑別する方法として風疹特異IgG抗体avidityについて検討した。これは市販されているEIA法による風疹IgG抗体測定用試薬[ルベラIgG (II)-EIA「生研」]を使用し、血清反応が終了した後、通常の方法で風疹IgG抗体を測定する系と、抗原抗体複合物を8M尿素と反応させ、抗原との親和性の弱い抗体を除去し測定する系を同時に平行して行うものである。その結果は後者の吸光度を前者の吸光度で割った値をavidity indexとして表した。

検体は東京大学医学部附属病院分院を訪れ、風疹HI抗体価が1:256以上の妊婦11例であり、そのうち8例は風疹IgM抗体陽性、1例判定保留、2例陰性であった。また風疹IgM抗体陽性のうち1例はサイトメガロウイルスIgM抗体も陽性であった。血清はあらかじめ希釈試験を行い、一定の吸光度が得られるよう希釈を調製し測定を行った。さらに、初感染でかつその病日が明らかな血清、および再感染が明らかな血清を対照として同時測定した。

結果は、対照として用いた初感染23病日〜79病日の血清についてはavidity indexが3%〜18%を示し、再感染の血清については32%〜67%を示した。一方被検血清11例は36%〜64%を示した。これらの結果から、これらの妊婦の風疹IgG抗体は感染後かなり時間が経過したものか再感染によるものと思われた。

またこれらの妊婦はすべて妊娠を継続し予後はに示したとおり、サイトメガロウイルス胎内感染により死産したもの1例、障害は認められなかったもの5例、予後は不明であるが障害の報告を受けていないもの2例、現在妊娠継続中のもの3例であった。

以上の結果から妊婦において風疹ウイルス感染が疑われ風疹IgM抗体が検出された場合、風疹ウイルス遺伝子診断を行う前に風疹IgG抗体avidityを測定することにより症例をしぼりこむことは有用であると思われる。

デンカ生研株式会社 佐藤俊則 平野 勝 佐藤征也
帝京大学医学部附属溝口病院産科婦人科 川名 尚
東京大学医学部附属病院分院産科婦人科 小島俊行
石川県立中央病院産科婦人科 干場 勉
国立感染症研究所ウイルス製剤部 加藤茂孝

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