奈良県内で初めて検出された腸炎ビブリオO4:K68の食中毒について

1998年、わが国で初めて分離された腸炎ビブリオO4:K68は、今後の動向が注目されている菌株である。今回、本県で相次ぎ2事例の食中毒から腸炎ビブリオO4:K68を分離したのでその概要を報告する。

本県宇陀郡の開業医から1999年7月16日に、下痢、腹痛等の食中毒症状を呈した患者2名を診察した旨、桜井保健所に届け出があった。調査した結果、患者両名は同じグループで15日に保養施設で会食しており、その他にも、別グループならびに宿泊等の個人利用者が患者と同様のメニューを食べ、合計 117名中44名に食中毒様症状が発症していたことが判明した。患者の主な症状は、下痢(100%)、腹痛(52%)、発熱(25%)、嘔気(25%)および嘔吐(20%)で、発症までの平均時間は約16時間であった。当所において有症者検便12、保存検食7および従事者検便14検体について分離検査および血清学的検索を行った。結果、有症者3名から腸炎ビブリオO4:K68が検出された。摂食調査から有症者の全員が刺身(マグロ、ケンイカ、貝柱、カジキ)を食べていることから、それらの食材を重点的に検索したが原因食品を特定するには至らなかった。

また、他保健所管内で8月中旬に家庭内食中毒と思われる家族2名から腸炎ビブリオO4:K68およびO3:K6の分離を経験した。摂食調査をしたところ、鮮魚店で貝柱、マグロ、ズワイガニを購入、刺身等で食べていたが、先の事例と同様に原因食品を特定することはできなかった。

1999年9月までに本県で発生した腸炎ビブリオを原因とする食中毒5事例中、2事例でO4:K68が分離されたことは、注目されるものと考えられる。

奈良県衛生研究所予防衛生課
吉田 哲 市川啓子 山本安純 米澤 靖 岩本サカエ 青木善也

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