1997/98冬季広島県、佐賀県、千葉市における異なる塩基配列の小型球形ウイルスの流行

1997/98冬季に、佐賀県内で発生した感染性胃腸炎患者から検出した小型球形ウイルス(SRSV)はほぼ同一の塩基配列であった。しかし、1事例からの塩基配列は異なっていた。また、千葉市においても同様に、1事例は同市の他の事例とは異なる塩基配列を持つSRSVが関与していた。これら2事例から検出されたSRSVは、地理的に離れているにもかかわらず、RNAポリメラーゼ領域(NV81/82)における塩基配列が全く同一であることが判明した。

この理由を探索するため、2事例の疫学的背景を調査したところ、佐賀県の事例は、1998年2月に広島県内にスキーツアーに出かけ、帰宅後すぐに発症していた。また千葉市の事例も、1998年正月に家族で広島県に帰省し、帰宅後発症しており、両事例とも広島県内での感染が疑われた。そのため、これらの株と同季に広島県内で発生した集発・散発事例から検出した株のRNAポリメラーゼ領域(285bp)の塩基配列を比較したところ、広島県で検出した株の多くが同一の塩基配列を持つことが判明した。これら2事例は、遺伝子学的にも広島県内での感染の可能性を強く肯定するものであった。またこの結果は、1997/98冬季の流行株が、佐賀県および千葉市と広島県とでは異なっていたことを示唆するものであった。なお、これらと非常に近い塩基配列を持つ株は、広島県では1998/99冬季にも検出されている。

広島県保健環境センター 福田伸治 徳本靜代
佐賀県衛生研究所 舩津丸貞幸 江頭泰子
千葉市環境保健研究所 北橋智子
千葉市保健所 田中俊光
国立感染症研究所 松野重夫

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る