仕出し弁当を原因食品とした小型球形ウイルスによる集団食中毒事例(続報)−熊本市

前報(本月報Vol.20、No.2、1999参照)で、1998年11月4日熊本市内で発生した仕出し弁当を推定原因食品とする小型球形ウイルス(SRSV)による食中毒において、疫学調査の結果、調理者家族(子供3歳)を原因として、子供→家族手指→弁当と汚染された可能性があることを示唆した。また、この子供の便から電子顕微鏡法(EM法)で3週間にわたってSRSV様ウイルス粒子を検出したことも報告した。

今回我々は、この事例由来のSRSV(NLV)のYuri系プライマーによる遺伝子産物373bpの遺伝子解析を行い、患者、調理者、調理者家族(子供)由来のものすべてが、ほぼ100%の相同性があることを確認した。子供から検出されたウイルスについても、初回検査と3週間後の検査で検出されたものは同じ塩基配列であった。このことから、この子供は再感染ではなく、同じウイルスの感染が3週間にわたって持続し、EM法で検出されるほど大量のウイルス粒子を持続して排泄していたと考えられた。

前報で、当該弁当調理施設のある地区ではこの時期に感染性胃腸炎が増加していたことも記載したが、今回の食中毒に先立つ10月下旬に、幼児の散発事例から検出されたSRSV1株中1株、同時期に発生したSRSVによる集団発生事例から検出されたSRSV5株中3株のYuri系RT-PCR産物の遺伝子解析の結果も本事例の結果と100%の相同性があった。

調理者家族の子供は保育園には通園していなかったが、近所の子供とはよく遊んでいたということから、市内で流行していたSRSVが、この子供により家庭内に持ち込まれ、家族(調理者)の手指を介して弁当を汚染した可能性が示唆され、このような汚染経路が生カキを原因食品としないSRSVによる食中毒の発生原因の一つとして考えられた。

熊本市環境総合研究所
松岡由美子 阿蘇品早苗 本田れい子(現保健福祉管理課)
国立感染症研究所感染症情報センター 松野重夫

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